第11話 帰還と防具屋

 

「……っ!眩しぃ……」


 久しぶりに太陽の下に出てこれた。

 目の奥がちょっとズキズキする。


 町までの道を歩いていると、すれ違う人達の視線が痛い……俺の今の見た目はかなりやばい。

 全身ボロボロで服は穴だらけ、狼の毛皮を羽織っていて全身返り血だらけで異臭もする。


 さすがにやばいので、木陰で水魔法を使い、身体中を洗い流した。

 服はどうしようもないが、汚れと臭いはマシにはなった。




「止まれ!身分証は持っているか?」


 門の前まで着いたところで門番に止められた

 俺はギルドカードを取り出し、門番に見せて町に入った。


「ギルドに向かう前に何か、服ないかな……」


 せめてインナーだけでもいいので買いたい。

 銀貨1枚しかないが、値段さえ分かれば素材の買取や依頼の報酬で買えるだろう。


「防具屋か……防具があるなら服もあるのか?」


 服屋を探しながら、ギルドに向かっていると、ギルドの近くに防具屋があったので、寄ることにした。



「すみませーん」


 防具屋に入ったが、店の中に人影が見えないので、奥の部屋に向けて声をかけた。奥から女の子が出てきた。


「はーい、お客さんかな?あらら、かなりボロボロだねー、新しい防具買いに来た?」


 見た目10歳ぐらいの女の子が店員のように喋りかけてきた。


「店番かな?偉いね。服か防具がほしいんだけど……お父さんかお母さんは奥にいるのかな?」


 俺はできるだけやさしく、女の子に接する


「あ"!?私が店主ですけど!?誰が、見た目がお子ちゃますぎるツルペタ幼女だ!コノヤロウ!」


「誰もそこまで言ってないし!って君が店主!?」


 慌てて鑑定してみると


【名前 / 性別】シェリー / 女

【年齢 / 種族】24歳 / Lv.12

【スキル】裁縫:Lv.6


 『マジで10歳じゃない!しかも裁縫スキルレベル高っ!』


「もぅ!私のことを知らないってことは、ギルドからの紹介じゃないってこと?見たところ冒険者みたいだけど……」


 機嫌が少し収まってきた幼じ……シェリーが聞いてきた


「はい。ギルドから紹介が必要なら一度ギルドまで行ってきますけど……」


「いや、いいよ。とりあえず要件は服か防具が欲しいってことだったよね?」


「はい。値段さえ分かれば素材を売るなりしてお金は工面できるので……」


「ウチは防具屋だから、服なんてインナー程度しか作れないよ。防具って言ってもピンキリだからなー武器によって防具も変わってくるし……君は主要武器とかあるの?」


「俺は、今のところは剣ですかね……今ちょっと訳ありで手元にないですけど」


 さすがにここで『血刀』は見せれない……


「あっそ……剣なら鉄でも皮でもどちらでもいけると思うよ、防御力重視なら硬い鉄で、動きやすさ重視なら柔らかい皮って感じかな」


 武器は刀だが魔法も使うだろうし、場合によっては槍にするかもしれないしな……


「なるほど……それだと皮の防具の方がいいですね」


「皮だと……色々あるけど魔物の皮が主流かなー、安いやつでホーンラビットの皮で作った防具が銀貨2枚だね」


 魔物の皮でも防具が作れるのか


「それなら素材の持ち込みとか可能ですか?魔物の皮なら数種類あるんですけど」


「あぁ、それでも大丈夫だよ。素材にもよるけど基本的には銀貨1枚〜10枚の間で作ったげるよ」


「じゃあ、それでお願いします! とりあえずお金の準備と素材をここに運ぶので、後でまた来ますね」


「わかったよ。ちなみに君が今羽織ってる毛皮でもいいのが作れそうだから、また持っておいで」


「わかりましたーでは、また後で来ます!

あ、ちなみにその袋っていくらですか?」


 シェリーさんの後ろのカウンターに置いてある皮の袋がちょうどいい大きさだったので聞いてみた


「これは売りもんじゃないよ。素材を運ぶために使っていた袋だよ。ほしいならタダであげるけど?」


「いいんですか?助かります。素材運ぶのに欲しかったんですよー」


 そう言って受け取り、ギルドに向かった


 ギルドに向かいつつ魔石を何個か袋に移していく。

 ギルドの扉を開けて受付カウンターを見ると、エルさんのカウンターが空いていたので、そのままエルさんに話しかけた。


「すみません、遅くなったけど、やっと戻ってこれたよー」


 そう言って苦笑いしながらエルさんを見たが、エルさんは、浮かない表情だ。

 かなり気分が落ちているようだが、なにか辛いことでもあったのだろうか。

 周りの冒険者達も気にしてるのか、こちらを心配そうにチラチラみている。


「エルさん、大丈夫?何かあった?」


「いえ、大丈夫です……ちゃんと仕事しますね。依頼の完了報告ならギルドカードと依頼書の提示をお願いします……」


 こちらに目を向けず、そう言われたので、言われた通りに提示する。


「エレメンタルの討伐は、確か1体につき銀貨1枚で、魔石は別買取でしたよね?」


「はい、エレメンタルの討伐ですね……エレメンタル!?」


 エルさんが急にこっちを向くと、カウンターに身を乗り出してきた。


「エルさん!?どうしたの!?」


「ジンさん……生きて帰ってぎだんでずね……よがっだよー」


 エルさんが泣きながら笑っている……

 折角の美人が台無しな顔になっているが大丈夫だろうか。


「なに!? ちょっと泣かないで……周りの人達も見てるし」


 正直、みんなの視線が痛い……



「ジンさん、ギルドマスターから話があるので応接室に来ていただいてもいいですか?」


 エルさんが落ち着くのを待っていると、涙を堪えながら言われた。

 

『ギルドマスターってあのお爺さんだよなー話ってなんだろ……』


 エルさんに言われるがままに後をついて行き、応接室に通された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る