第2話 初戦闘
「ん? やば……」
スキルを調べながら歩いていると、不意に視線を感じた。
目を向けると、耳をピクピクと忙しなく動かす角兎と目があった。
……どうやら、気づかれたようだ。
戦闘は避けられそうにない……俺は腰を低く落とした。
周りを見渡したが、木があるだけで逃げ場はない。
角兎の周りには、俺が買い出しした食材が広がっており、角兎は俺に気づくまでバイクを攻撃していようでガソリンタンクに穴が空いている。
お互いに視線を交差させる。
向こうも警戒しているのか、耳がピクピクとせわしなく動いている。
しばらく見つめ合っていたが角兎はどこかへ行ってくれそうにない。
何かいい方法はないかと角兎を凝視していると
鑑定画面が出てきた。
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【ホーンラビット】 Lv.3 / Eランク
【スキル】身体強化:Lv.1
【補足】赤身肉。肉質はしっとりとしていて柔らかい。
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角兎はホーンラビットと言うらしい。
「そのままだな……」
レベルは俺よりも2つ上で、Eランク……
基準はわからないが、Eはそんなに強くない気がする。
補足の内容見た感じだと、食えるのか……?
<補足>を鑑定してみると
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<補足>
スキル<料理>により食材の状態、品質がわかる。
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<料理>凄いな。
鑑定と合わせて使うことで、食材のことがわかるようだ。
「異世界なら魔法とか使えないのか?」
じっとしていても仕方ないので、出来ることは試してみることにした。
ホーンラビットに掌を向けて適当に叫んでみる。
『ファイア! もえろ! メラ! フレイム!』
炎をイメージ出来るものを適当に叫んでみたが何も起こらない。
森の中で叫んで、ただ恥ずかしい思いをしただけだ。
俺が叫んだことで、ホーンラビットが前傾姿勢になってこっちに突っ込んできた。
「うわぁ!」
俺は足元にあった、石を思いっきり投げた。
ステータス補正の効果なのか、俺が投げた石は、すごい勢いで飛んで行き、ホーンラビットの頭に命中して動かなくなった。
「倒した、のか?」
石を当てたが倒せたかわからない。
そのままホーンラビットを凝視していると半透明の画面が出てきた。
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【ホーンラビットの肉】<身体強化:Lv.0.1>
赤身肉。肉質はしっとりとしていて柔らかい。
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肉?死んだのか……?
説明文はホーンラビットのステータス画面の補足と同じだが、名前が<ホーンラビットの肉>になっている。
ゆっくり近づいて、木の枝で突いてみる。
すると、ホーンラビットの体が青く光ったと思ったらスーッと消えていった。
アイテムボックスを確認すると半透明の画面に【ホーンラビットの肉×1】と表示されている。
「アイテムボックスに入ったって事は、死んだのか」
独り言を呟きながら散らばった食材をアイテムボックスに入れていく。
生き物を殺してもあまり罪悪感は感じなかった
実家の厨房に出てきたネズミとか、罠で殺してたし人型とかじゃなければ大丈夫っぽいな。
どうやってここに来たのかも帰る方法もわからないが、俺は意外と冷静だった。
帰る方法がわかれば、どっちの世界で生きるか、その時に決めればいい。
バイクは使えそうにないが、置いておくのも勿体ないのでアイテムボックスに入れて置いた。
それよりも、そろそろ暗くなってきたので、道か何か手がかりを見つけないと、この森で野宿する羽目になる。
先程とは逆方向へ、しばらく歩いていると、先で森が途切れているのが見えた。
そこは草原のようになっており、開けた場所だった。
周りは木々に囲まれているので、まだ森の中のようだが、草原の真ん中には、石の柱があった。
柱に近づいて確認してみたが、穴が開いているだけで、文字も何も書かれていない。
自然物には見えないので、誰かがここに置いたのだろう……
俺は柱の傍で、今日初めての食事を取る事にした。
辺りは日が落ちてかなり暗いが、バイクのヘッドライトが使えたので、何とかなった。
食事は、買い出ししていた食材で腹を膨らませた。
「肉食いてぇな……」
俺は明日からのことを考えながら、意識を手放した。
****
窓から注ぐような日差しの眩しさで目を覚ました
目を開けるとそこは、天井·····なんかはなく青空、周りは木に囲まれている。
「やっぱり夢じゃないのか……」
ここが異世界ならどうやって生きていくか考えないといけない。
まずは人に会いたいところだ、食料もいつかは尽きてしまう。
「そう言えば色々拾ったな……」
ここに来るまでに、アイテムボックスに何が入るのか調べるために色々拾っていたのを思い出した。
拾ったものを鑑定してみると……
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【石】
落ちていた石
【セグの木の葉】
燃えやすい葉
【セグの木の枝】
燃えやすい枝
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この辺に生えてる木は、セグと言うそうだ。
「あとは、これだな……」
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【ホーンラビットの肉】<身体強化:Lv.0.1>
赤身肉。肉質はしっとりとしていて柔らかい。
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俺はアイテムボックスから、
昨日、調べていて分かったが、アイテムボックスに入れた物は、中で分解、解体をすることが出来るらしい。
動物を捌いたりしたことがないので、この機能はかなりありがたい。
「ん? こんな表示あったか?」
肉の名前の横に<身体強化:Lv.0.1>と表示されている
身体強化は確か、ホーンラビットのステータスに表示されていたスキルだ。
もしこれが、
ステータスに
「食べるにしても生じゃ食えないよな……火をおこせれ、ば!?」
俺は自分の指先を2度見した。
人差し指の先に1cm程の小さな火の玉が浮かんでいた。
昨日はあれだけ叫んでも出せなかった魔法が、なぜか使えた。
かなり小さい火だが、頭の中でライターで火をつけるイメージをしたら出てきた。
「詠唱じゃなくて、イメージが大切なのか?」
火が消えるイメージを頭の中に思い浮かべると火の玉はフッと消えてしまった。
1度ステータスを確認しておこう。
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【名前/性別】カミヤ ジン/男
【年齢/レベル】17歳 / Lv.2
【スキル】料理:Lv.5 / 火魔法:Lv.1
【ユニーク(隠蔽)】転移者 / 鑑定 /
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「おぉ! スキルに火魔法が増えてる」
イメージするだけでスキルが手に入ったのか?
これも転移者の恩恵なのかもしれない。
「これなら問題なさそうだ」
俺はアイテムボックスから、セグの木の枝と木の葉を取り出し、ホーンラビットの肉に太めの枝を刺して地面に斜めに突き立てた。
肉の下に葉っぱを敷き詰め、指先から火を出して、セグの葉に燃え移らせた。
火を消さないように細い木の枝を、少しずつ焼べる
パチパチと音を立てながら燃えて、肉を焼き始めた。
肉からはほんのりと油が出てきていい感じだ。
十分に火が通ったところで、肉を火から放し口元にもってくるり
「この世界の生き物だから、ちょっと怖いが……」
俺は1口肉を食べてみる。
「……う、うまっ!」
表面に油が出てきていたので、油っこいのかと思ったが全然しつこくない、むしろさっぱりしている
表面はカリッとしているが中は柔らかくジューシーだ。
俺はあまりの美味さに、ホーンラビットの肉をあっという間にたいらげてしまった。
「ごちそうさまでした。さてと、ステータスはどうなってるかな?」
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【名前/性別】カミヤ ジン/男
【年齢/レベル】17歳 / Lv.2
【スキル】料理:Lv.5 / 火魔法:Lv.1 / 身体強化:Lv.1
【ユニーク(隠蔽)】転移者 / 鑑定 /
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「やっぱり、身体強化が増えてるな·····レベルは1か」
素材の時は、Lv.0.1と書かれていたのに、
身体強化を鑑定してみると
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【身体強化】
身体を動かす能力を向上させる。
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「効果時間とかは書いてないな……また後でステータスを確認してみるか!」
朝からガッツリ食べた俺はまた、森の中を散策することにした。
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