第19話

19話

<div name>小さな思い</div>


満たされて

与えられる毎日


欠くことことなく

いつも完成したパズルを見せられている


人類が栄えたのは不明な世界を知ったこと

冒険したことその一言だと思うが


そういうことなら私の人生はもう栄えることはないのかもしれない


子供の頃からそんなことを考えていた

もう決まったことなのだ

生まれてすぐに決められた私のすすむ道


オンギャーしてバブみのあるような年で何を変えれるというのか


そう生まれた時から道は決まっている

ただ少しだけ年をとって選べることが増えるだけ


得られることが増えれば

選べないことも増える


等価交換の法則だったか


そして、私は与えられたが

与えられなかった人間も存在するのだ


選べない、選びようがない道もある


それを選ぶしかないそんなこともあるだろう


この世界はあまりに残酷だ


なにも平等なんてものではなく

生まれながらに上下ができている


世界はあまりにも矛盾を孕み


私は世界がつまらなかったんだ



幼い頃から裕福で

不自由なく過ごしていた


自分の家が他とは違うと気付いたのは小学生の時だった

父はとある会社の社長で母は普通の家庭の出身


エスカレーター式の学校へ入り

人生はトントン拍子で進む予定だった


小学生の頃にふと始めた武術が私を変えたんだ


父からは反対されたが当時の私はもっとワクワクしたかったんだ

学業、芸術とばかり押し込まれてきたが

武術にはそのときいままでとちがうワクワクがあった


そう、人とは違うなにかをしたかった


夢中になれるなにかが欲しかった


当時学校を終えて歩いていると

一人の女の子が川を見つめていた


海都「、、、なにしてるの?、、」

遠くを見つめるような女の子の眼差しが気になり声をかけた


??「、、川の向こうにはなにがあるのかなぁ、、って

おもってたの」


同じぐらいの年の女の子はそう答え



??「知ってることも沢山あるはずだけど、知らないこといっぱいあるなぁ、、ってね、知らない方が楽しいって、そんなことかんがえてたの」


少女は続けた


このときの彼女の姿が今でも忘れれない

夕焼けに染まり彼方を見つめ

髪をかきあげながら話す彼女はとても神秘的に見えた


海都「、、今は楽しんでる?」


??「、、うんそうだね、、いつかまでは楽しんでいるよ」


海都「、、いつか、、?」


??「そう、いつか、知りたくないことを知る時が来る、知らなきゃいけないこと、、そのときまではきっと楽しいんだよ、うん、たのしいよ」



そういって彼女は笑った


なにを話しているのかわからないところもあるが、どこか神秘的で海都にとって彼女はとても興味深かった

その場はそれで分かれたが、下校中に何度か会う時があり、仲良くなっていった


彼女の名前は

未納晴


はると呼び

同い年で違う学校に通う金髪の女の子だった


はるは明るく、いつも元気だった

あのとき見た遠い目をした女の子と同じと思えないぐらい

不思議なことを突然呟いたりするが

それで周囲は和むし

私にとって一緒にいてとても落ち着く友達だった



そして私が中学生になる時に

父が浮気をし母と分かれて住むことになったのだった


そこから私の人生は変わった

母は一人で自分を育てると言い今までの生活を捨てた


私はまた、選ぶこともできない


今までの学校は小学校卒業と同時に離れ

中学からは新しい学校、新しい友達になり

人知れず私はワクワクしていた


そして、あの時友達になったはると同じ学校になり


新しい人生がはじまるのだ

普段あまり表情を表に出さないが

このときはニヤニヤしていたと思う


家族が分かれるのは当然寂しい想いもあるが

それ以上に新しい世界に私は憧れた


入学、身の回りのことを終え新しい友達とははるに囲まれて

そのときは接し方も今までとは変わり色々苦労もしたが

楽しかった


今まで知らなかった知識も知ることになり

はるが突然言い出したアニメ、ゲームのコスプレとかもこの時に覚えた


はるの旧友、琴木、レウスという子達からはるが教えてもらい私が誘われた流れである


もともと髪の色も相まってか、キャラになりきり人前に出る事は新しい自分を感じれてとても楽しかった


よくはわからないがとても人気があったらしい(はるがびっくりしていた)


いつも隣にいたはるは、子供のように元気に無邪気で、守ってあげたくなる存在だった


不思議なことに、時々はるが突然意味不明なことを言いだす時があるのだが

それが未来を予知したかのように当たる時があった


不思議なこともあるもんだと当時は笑い話にもなっていた


コスプレのイベントを選んでいる時もそう

昔と違い少ない小遣いでやりくりしている学生の身にとって全部にでることは難しのだが

はるのいうイベントに出向けば人が沢山集まった


その結果が自分の人気につながったのである


そしてはるが一度遠い目をして話してくれたことがある


はる「、、いつかね、赤い髪の女の人に出会ったら助けてあげて欲しいんだ、彼女はね選べなかっただけなんだ、取り上げられて、奪われて、だれより幸せになりたいだけなのに、選べなかったんだよ」


海都「、、?わかった、、はるがいうならなにかあるのだろう、大丈夫、任せろ」


はる「、、うん、赤い髪の女の子はね、全てを繋げる存在だから、海都ちゃんにできることで守ってあげてね」


そう言っていた


なんだろう、はるがこんな目をしている時はだれか違う存在と会話しているような、そんな気になる



そして、時間は経ち、とあるコスプレイベントに出場している時に


赤い髪の女性に出会った

自分を見て彼女は泣き出していたから

一目見てはるの言っていたのはこの人だと感じた


どうしていいかわからなかったが


考えるより先に抱きしめていた


海都「、、大丈夫だから、、」


遊離「、、うん、、、」


ほっておけなかったんだ

はるに言われたからではなく


新しい自分になり

見つけた世界

そこはワクワクの連続だった

でもただ

自分の前で誰かが泣いている

そんなことが嫌だった

手を伸ばしてあげたかった


あの時とは違う


私は自由だから


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