第10話
10話
<div name>琴木</div>
手を繋いで歩いていた
買ってもらったばかりのおもちゃを右手にかけて
右手にはお母さん
左手にはお父さん
夜空を見上げながら歩く
ずっとそれが続けばいい
そんな琴木勇9歳の誕生日だった
日々がそうであってほしかった
毎日両親が笑い合い
楽しい家庭を送れればと琴木は願っていた
夜になり、お酒が入れば両親の大声があがる
布団を頭から被り辞めてくれと声をあげる
ガラスの割れる音、優しいお母さんの泣き声
優しいお父さんの止める声
いくら琴木が声をあげても止まらない
朝を迎え泣き疲れて布団から出ると3人で食事していた宅が荒れ
ガラスが砕け散り
食器は割れている
その中を琴木はガラスを踏まないように蹴り分けて学校へいくのだった
誰にもそれは言うこともなかった、言ってなにが変わるのか
何度も叫び、怯え過ごしてきたからか
諦めにも似ていた心境である
ただ周囲の家庭はそうでなく
夜遅くに悲鳴にも似た音が聞こえてくるのだから
噂にもなる
琴木の息子と遊んではいけない
そういわれるのも時間はかからなかった
9歳ではあるが琴木は気付いていた
周囲に噂され遊んでいた友達がはなれて行くこと
寂しい気持ちは当然あるが仕方ないし
何もできない事もわかっていた
ただ一人で過ごすしかなく
ゲームを好み
漫画を読む
琴木に取れる方法はそれだけだった
別に悲観的になるわけでもなく
ただそれが自分の時間なのだとそう思っていた
抗えない運命みたいなものだと
しかし、何も感じなかった
悲しいとも、辛いとも、抗おうとも
何も
ただ、寝ることや、ゲーム、漫画、プラモデル
そう言ったことが楽しかった
ある日いつも通り学校が終わり家に帰ろうとすると
??「こときくん!」
誰かに声をかけられる
確か、、外人の、、、、レウス君だったか
同じクラスに外人がいる、子供はどうしても自分たちと違う事があれば叩く的にする
当然レウスも(いじめ)の対象にされていた
レウス「あ、、、あそぼうよ、、!」
何だかわからないが力説される
琴木「あぁ、、うんいいよ」
そうしてレウスと遊んだ、他愛もないゲームしたり好きな漫画読んだり
プラモ買いに行き、一緒に作ったり
いつも一人でいた自分と、レウス、好みも合い楽しく遊んでいた
楽しくて、安心して、その時間がとても大好きだった
そんな中、一つ事件が起きた
休憩時間にレウスと話していると
???「琴木外人となかよくしてんの?外人にでもなったのか?」
そーだそーだとか、笑い声とか聞こえてくる
琴木「なるわけないだろ、バカか?」
いきなりの展開に黙るいじめっ子A
A「、、そんなことはいいんだよ!」
琴木「いいなら最初から言うな」
A「お前むかつくなぁ、、、」
琴木「もうかえれば?」
これで矛先はこちらに向いた
レウス「、、、」
黙るレウス
レウスを見て笑ってやる
琴木「別に気にすんな、運命だから」
そう、運命、当時の琴木の口癖だった
もう決まったものだと、誰も変えられぬものだと
だが、琴木は
決まったものは覆せない運命だからだと思う
だけど決めるのは自分だ
琴木「どうでもいいけど、時間だから、もう戻れば?どうせ用ないんだろ?」
A「、、、覚えてろよ!」
どっかの奇声上げるモヒカンみたいなセリフを吐くA
琴木「ほら、レウスも戻れよ、次の時間はトラスエ5の攻略おしえてやるから」
レウス「、、ありがとう、、」
少し涙ぐみレウスは自席に戻っていく
何でもいいんだこんな事は
自分が何とかできる事なんて
小さな事なんだから
表情を消し琴木は授業中寝ることにした
次の休憩時間にまたAが来るかなとは思ったが来なくて、レウスといつもみたいに遊んでいた
??「琴木くん、、!」
後ろからこえをかけられ振り向くと
隣に住む美納春がいた
はる「あ、、、あの、、あのね」
??「はるー」
友達に呼ばれるはる
はる「あ、、、帰り一緒に帰ろ、、?」
琴木「あー、、途中までならいいよ」
どうせ親に近寄るなとか言われてるんだろう
はる「、、うん、帰り正門で待ってるね」
琴木「お、、おう」
少し照れながら答えるとはるは友達の元へ走って行った
レウス「、、、琴木君、、、、キタね」
レウスの後ろ頭を叩いておいた
学校帰りに正門にいくとはるがいた
レウスは「僕はさきにかえるから、、へへへ」
とかいうので蹴った
はる「あ、、琴木君、、」
琴木「あ、あぁ、、」
気まずい空気の中
はる「帰ろっか、、」
琴木「お、おう」
一緒に帰る
どうしよう、、
なんか照れる、、、、
はる「あのね、、レウス君に大畑君が言ってたことなんだけど、、琴木くんも、あの、、」
気を使ってくれたのかどうか、
琴木「いじめたい奴はいじめるし、いじめられたくない奴はいじめられたくないし、あいつが何してても関係ないよ、運命だからなんもかわらないよ」
大畑くんだったのかあいつ、、、
初めてAの名前を知る
琴木「、、めんどくさいだろ、誰かがいじめられたりとか、そんなのは一人でいい、慣れてるし」
そうなのだ
いじめられてる奴を見ていると、気をつかうだろ?
めんどくさいのだそう言うのが
よくはわからないが当時はそう思っていた
そういいながら、
狂う母を止める父を思い浮かべた
どちらも何かの正当性はある
それの違いで戦争や喧嘩になる
怖くても、辛くてもそれは変えられない
お互いに守るべきものがあるんだから
そして父に母に守られているのは自分なのだと、琴木は知っていた
琴木「守ればいいだろ、守れるんだから」
そう笑顔で答えた
はる「、、うん、、そうだね、、そうだよ、、ごめんね、、」
琴木「なんであやまるの?」
はる「お母さんにね、琴木君と話すなって言われてね、、遊びたいなって思ってたけど、、話せなくて、、」
琴木「そういうときもあるよ、運命だからさ、適当でいいよ」
運命だと、、
決まったことだと、、
抗うことなく
諦めにも似た心で、、
琴木「適当にえらべばいいよ、なんともならんことはならないし、なることはなる、決めるのは自分だから」
決めたことは変えれない
決めることは自分で決めれる
抵抗でもなく
抗うことでもない
だけど、だけど
父と母が殴りかかり、押さえつけ、ガラスが割れ、食器が割れ、
そんな中でも
叫んだ、叫びつづけた
「やめてよ!やめてよ!」
琴木の声を聞いた父が自分を見て悲しそうな顔をしているのを思い出す
琴木「色々あって何かやる時は、叫ぶんだ」
そう言い息を吸い
琴木「これからあそぶぞーーーーーー!!!!」
はる「、、うん、、」
涙ぐみ答えるはる
はる「あそぶぞーーーーー!」
琴木「あそぶぞーーーーー!」
はる「あそぶぞーーーーーーーー!」
笑い合い、同じ道を歩いた
小さなことでもいいんだ
抗えない運命なんだから
抗わなくてもいい
立ち上がり
上を見て
声に出せばいい
行動すれば良い
どうせかえれないんだから
変わらないんだから
、、、行ってやればいいさ、、、、
沈黙の円卓の中
はるが立ち上がった
はる「大丈夫!!!がんばろーーー!なんかわからないけど、、がんばろ!!!」
いきなり声を上げるはる
琴木「、、、、うん、、なんとかなるか」
(運命)だよなこれも
長く忘れていた口癖を思い出す
笑う泉さん
メンバーの皆も笑い出す
絶望でもいいんだ
変わらないんだから
行けばいいよな?はる。
あの日に渡していたものが
忘れてしまった時に帰ってくる
一人が二人に、二人が今たくさんの人に渡されていった
荒れた部屋、ガラスが飛び散り大好きだった家族で食べたお気に入りのご飯の食器が割れて
優しいお母さんは髪を震わせ泣き叫び
優しいお父さんは暴れるお母さんを抑えている
叫ぶ僕をみて、お父さんは困った顔を向けて
その後に自分を見つめて
笑っていたんだ
優しく
震える僕を見つめて安心させるように笑っていた
明るみがさした円卓で、
はるは琴木を見て
笑っていた
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