第9話

9話

<div name>解明</div>


先生が(消えて)数年が経つ

嵐のような日々だった


あの発表の日の翌日に先生は消えた


組織の迅速さに脱帽である

それとも以前から目をつけられていたのだろうか



人は本当に儚いものである


泉は少し感慨深くなり

ため息を漏らす


博士と調べた軌跡とも言える全てを記した書は大切に保管しているが

いつになれば託せる人間は現れるのかもわからず


自分と先生のとった行動は間違ってなかったのかと後悔に苛まれそして忙殺される日々だった


託せる人間がいたとしても、相手はあの組織である

世の報道、警察さえも手中にする組織

誰が戦えるのか

自分たちの調べたものは無意味だったのではないかとも思うこともある


扉を叩く人間をずっと(待つ)だけの日々である


先生が消えてから、問い合わせが殺到している

研究途中のものもある

自身の生活もある


先生と過ごした日々だけが泉の支えであった


泉「今日は風が強いわね、、」


舞う髪を抑え車に乗る


落ち着いたと思えばまた問い合わせが来る


今回は先生の研究について知りたいことがあるといった内容だった

ちょうど時間が空いていたこともあり、

簡単な問い合わせでも後々もめることもあるし

直接あって話せば終わるならと早請け合いしたのだった


場所時間をこちらが指定できたのもある


内容は詳しくはわからないのでざっとした邪魔にならない資料だけ持っていくことにした


心が疲れ考えることが難しくなってきているのかもしれない


待ち合わせ場所は車で30分ぐらいといったところか

順調にいけば待ち合わせ場所には早く着きそうだ






琴木「、、、騒がしい、、、」


レキミ「ウェイウェイしようぜ琴木〜!」


はる「ウェイウェイって何?」


海都「お祭り的な、、?」


リウス「、、あぁ、、いい匂い、、」


はる、海都「、、キモい、、、」


八木「騒がしいね、、」


少し楽しそうな八木さん


はる「遊離さんもきたらよかったのになぁ、、、」


今回遊離はお留守番である

何か調べたいことがあるらしいが


八木「人数少し多かったかもしれないね、、」


琴木「はい、、、」


遠足のようになっている惨状をミラー越しで見て微笑む八木


琴木「、、楽しんでますか?」


八木「、、あぁーうん、少しね、昔からこういうことがなかったからさ、少し、楽しいってこうなんだなと思ってしまうね」


八木さんは少し遠い目をして言った


いつも八木さんはワイワイ騒ぐ面子を見て

遠くから見ているイメージがある


少し優しそうな、自分の世界ではないようなそんな表情をして


八木の運転する車は目的地に着き停車する

都内から少し離れた森の中にある運転手が一休みするような大きめの喫茶店だった


店内に入ることにするが

人数を分けることにする


琴木、はるが店内に行き話を進める

八木、レウスが車内に待機

レミキ、海都が店内に他の客を装い入る


大人数だと話が進まないこともあるし、相手が不審がられることもある

そして何か起きた時の保険のようなものだと

八木のアイデアである


そして、琴木と海都には車内と通話ができる小型マイクと見えにくいようにしたイヤホンをつけている


八木さんが仕事場から借りたと言っていたが、、

便利な職場である、、、



店内に入り、事前に聞いていた名前を告げると席に案内される


琴木「初めまして、琴木と言います」


泉「こちらこそ初めまして、倭窟の助手をしておりました泉と申します、早速ですが倭窟の件と伺っていますが詳しく内容を伺っていいですか?」


いきなり本題に入ってくる


隣でビクッとするはる


少しトーンを低めに本題を話すことにする


琴木「はい、メールでは色々と騒がしくなる可能性があったので、内容伏せさせていただきましたが、、(遺産)のことでお伺いしたいのです」


泉「、、!」


はる「!」


予想してなかったらしくすごいびっくりする泉さんとそれを見てなぜかびっくりするはる


険しい顔をして泉は言葉を放つ


泉「、、先生の遺産の話でしょうか?」


琴木「いやそうではなく、、、」

と話したところで考えがよぎる


今泉さんはとぼけたふりをしているんだろうが


1、周りに組織がいることに気づいた?


2、琴木が組織だと思われている


のどちらだろうかと


今の状況なら、、、

手元から(遺産)を出し


琴木「これのことです」


はる「!!」


メニューを見てびっくりするはる


もうほっとこう、、、


泉「、、、一つ聞きたいのですが、琴木さんは(それ)をどうしたいのですか?」


少し考えた後


琴木「、、組織に対抗するためです」


泉「、、、、わかりました、場所を変えてもいいですか?ここでは(騒がしく)なるかもしれない、、ので」

トーン低めに言う泉


琴木「分かりました」


とりあえず、何も頼まないのも変なので、軽くコーヒーだけ頼む

(はるはがっつりパフェ頼んでいた、安かったらしい)


当たり障りのない会話をしつつ、店をでることに


泉「車で来られたのですか?」


琴木「はい、自分運転ができないので、連れてきてもらいましたので、泉さんの車を追っていく感じかなと思ってます」


泉「分かりました、案内します」


琴木「後、こちら今回人数いるのですが、内容が内容だけに組織対策も含めてなのですが」


後々めんどくさくならないようにさきに言っておくことにした


泉「分かりました、案内するのは、先生と私の研究所です、そちらなら、組織の心配ありませんので」


言葉を交わし、それぞれの車に移動して、研究所に向かう


内容を聞いていた八木が


八木「いきなり遺産出した時はびっくりしたよ」


琴木「周りに組織がいたらとはもちろん考えましたよ?ただ、場所は泉さんが指定した場所で、周りに組織がいる可能性は低いかなと、、ただ、泉さんが組織のものだった時は、、その時考えようかなと」


八木「まぁ結果オーライだね」


少し掛けだった部分もあるが、、


話してるうちに先導する泉さんの車が洋風の大きな屋敷の前で止まる

研究所についたらしい


こちらも車を止め車を降りると屋敷の中へ案内される


はる「ゾンビが出そうなお家だね、、、」


感心したようにはるが言う


レウス「ウイルス巻き散らかすやつでござるな」


レミキ「ハードに運動しても大丈夫そうな家だな!」


海都「、、、」


琴木「緊張感というか、、、なんというか、、、」


くすっと笑う八木さん


泉「愉快な仲間ですね」


微笑を浮かべる泉さん


琴木「そうですねさぁいきましょう」


開き直ることにした



一行は大きな部屋に案内されて適当に席に付く


全員が席に座り、泉さんも腰掛けて話し始める


泉「ここであれば組織に聞かれる心配はないでしょう、まず先にいくつか話を聞かせてもらってもういいですか?」


要点を絞り海都がさらわれた事件から話し始める

はるが見つけた球体のこと

遊離のこと


知りうる限りの情報を伝えた


泉「では遺産は起動できたのですね」


琴木「はい、ただ起動条件は分からず、いつも偶然起動する感じですが、、後、バッテリー?のことが未だ分からないままです」


泉「なるほど、では次はこちらのことですね」


倭窟のことから泉は話し出す


泉「まず倭窟の研究のことから話します、古物学、古代学の研究をしており、中でも彼はオーパーツと呼ばれる遺産の研究に力を入れておりました、世界に数々のオーパーツがありますが中でも遺産と分類される貴方の持つ(もの)は起動を確認されるものも複数あり研究材料としてとても優れていると彼は背景なしておりました」


琴木「オーパーツというものは、、ひょっとしてアステカ、古代エジプトの、、ですか?」


泉「そうです、有名どころでは他にも沢山ありますが、時代錯誤異物、、場違いな加工品とも呼ばれます」


はる「???」


キョトンとしているはる

仕切りに頷いているレミキ

目を輝かせているレウス


泉「それらの遺物には背景があり、何かの意味を残しているのだと彼は言いました、そして、遺産もそう、そして私たちは遺産に残された言葉を読み取ることに成功しました、そして組織を知ったのです」


八木「では、博士の行方が知れないというのはやはり、、」


泉「、、はい、組織の仕業です」


はっきりと泉さんは言った


レウス「スケールのでかさに俺氏ビビる」


自分が息を飲む音が聞こえる


一同が静まり帰る中八木さんが淡々と質問をする


八木「それでは、あなた方が調べた遺産のこと、そして知りうる限りの組織のことを伺いたいのですが」


泉「そうですね、少し長くなるかも知れませんが、、その前にあなた方は組織とどうしていくつもりですか?ご存知の通り、組織から逃げることも増してや相手にすることさえも難しい相手です、そんな相手からあなた方はどうしたいのですか?」



琴木「難しいことはわかってない部分もあります、そして何よりイマイチピンと来ないというか、、、正直、めんどくさいなとも思います、けれど、友達が危険な目にあっていて、友達が助けないと誰が助けるんだと思います、単純にそれだけです、世界を救いたいとは思いませんし、面倒臭いです、ただ手の届く範囲の、友達を救いたいと僕は思います」


泉「若いのですね、、」


そう言いながら少し微笑みを浮かべる泉さん


泉「分かりました、ただここからは話す内容は他言無用ですし、知れば組織に狙われることになるかも知れません、倭窟のようになかったことにされるかも知れません、それでもこの先聞きたいというのであればお話しますが、もし、いままで通りの生活のままでいたいといかたがいるのであれば、いますぐこの場から離れることを勧めますが、皆さまどうしますか?」



はる「なんとかなる!よね!」

レミキ「おう!琴木は俺が守るからな!」

レウス「拙者に任せれば万事解決でござる」

海都「、、私の問題でもあるし、」


八木「、、僕は僕の目的のためだけどね、手を貸すつもりだよ」


(、、、ゲームしてたいんだが、、、)

すごい思う、、、


琴木「そうだよな!そうだよな!」


どこか適当に言ってしまう



泉「分かりました、お話しましょう」


1冊の本を開き泉さんは語った


泉「まず私たちは遺産を調べ過去に世界が滅んだことを知りました」


いきなり滅んじゃったか、、、


泉「今のように科学が栄え、繁栄していた古代の世界で進みすぎた科学、人間の力は宇宙を超え、星そのものを破壊できるまでに及んだのです、そして人間は過ぎた科学の力で星の命を食い、破壊する、それを幾度も繰り返し星を渡り歩く種族だった、

その理由までは分かりきってはいませんが、、、」


もちろん解ではない

それは一つの説


泉「そうして人間は何度も星を破壊し上級種だけを次の星へ星の船(ノア)を使って移り住み、また破壊する。。それを繰り返して今の地球にたどり着いたのです」


夢物語を聞いているような、そんな気にもなる


泉「この地球に降り立った(彼ら)は大きな大陸で活動をしていきました、高い水準の科学力を持ち当時の彼らは人の命さえも操れたと伝えられています、その中で生み出された数々の秘宝、それがオーパーツ、そして遺産なのです」


果てしない、そう一介の学生には果てしない物語りでとても信じることもできないぐらいの壮大なスケールの話だった



泉「そして、栄華を極め、また星を破壊していく過程の中で、反乱分子が生まれ彼らの大陸は戦争の火に包まれていったのです、当時の戦争は激しく、異常気象を起こし氷河の時代へと変えるほどでした、そして大陸を沈め、勝利した反乱分子たちはこの星の様々な場所でひっそりと暮らしていくことにしたのです、永遠の命を捨て、いつかは消える命になり、(彼ら)は人としてこの星に生を持つことになったのです、しかし、星を食らう者たちは生きながらえていました、戦争で今まで蓄えた力を奪われましたが、この星を見えない世界から支配して行ったのです」



琴木「。。。」


泉「星を食らう者たちは、そう、あなたたちが相手をしている組織」



言葉をなくす

ついこの前まで一介の学生なのだ

毎日プレイするゲームを愛し

うるさい幼馴染がいて

いつもの日常があって


そんな中に降りてきた言葉

真実なのかどうかはわからない


でも、日常に降りてきた非常識そのもの



泉「私と倭窟はここまでの説を打ち立て、まず、なぜそんな科学力のあった彼らが時間をかけて星を食っていたかに着目しました、あなたの持つ遺産の原動力とのお話ですね。

世界は一つの杯なのです

その名は聖杯。

その中には魂の光が満ちています、内容量は決まっていて、溢れ、また満ちてそんな器みたいなものなのです。

彼らはその器に満ちた魂の力を使いオーパーツを起動させるのです」



自分の手元にある球体、遺産を見つめ泉は話を続ける


泉「魂といってもそれは形容しがたいのですが。。人の生きた道で積み重ねたものがエクトプラズムのようになったものと思ってもらえたらいいかと。

善行を重ねれば白くなり、悪業を重ねれば黒くなるようなものです。

そして彼らは黒い魂を使えば破壊の力を生み出せることを知っていました、悪業と一言で表しましたが、退廃的な人の道の積み重ねでそれらは生まれるようです。

負の力とでもいいましょうか。。

そして長い年月で魂の力を溜めて、自らの延命と、星の破壊のために使う、それが彼らです。


なぜ破壊を繰り返すのか

それは宇宙全体を黒く染めることなのではないかと私たちの研究では一つの説を立てました。


この星の反乱分子が残した遺産、オーパーツを回収したがるのは二つの意味があり、

一つは、この星の聖杯、器に白い魂を溜めさせたくない為。

もう一つは、勝手の反乱分子を恐れる為

と考えています。

あなた達が遺産を切り札にしたこと、それは正しい選択だったのかもしれません」


今までの教科書や伝説、歴史、それらが全て嘘だったのか?ということ

そして今の話さえも嘘ではないのかということに支配されていく


今までの常識はなんだったのか?

何が常識なのか


世界は擬態している

誰かが作り、あたかもそれが真実だと思わせるように。



泉「。。スケールの大きい話で戸惑うかとは思いますが、これだけは理解していてほしい。

あなた達の相手は、古代から世界を裏で支配し続けてきたモノなのだということ。」


真実は絶望なのだ

いつだってそう

夢は寝てみるもので、その中では死ぬこともなく飢餓に苦しむこともない、だがしかし、夢から覚めた現実は、真実は、あっけなく死ぬ、苦しむのだ


部屋の中は静寂だった

誰もが言葉をなくし発言することさえ許されない空気

それが今ここにはあった


深い泥沼にはまったかのような

生きることをやめ

堕ちていくような

静寂があった

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