始めての授業
春だなぁ。
学校って言うのは日の光が入るように作られてる。
渡辺渉(わたなべわたる)。
この絶対に出席番号を最後になるこの名前。
廊下側から名前順で席順が決まる。
この名前のおかげで窓の側の席でポカポカの陽を浴びる事ができる。
窓の外には芝桜が咲いている。
やっぱり春が一番好き。
「って聞いてた?渉くん」
ん?
「その顔はなんも聞いてないわね」
「すいません」
「ううん、別にいいわよ。じゃあもう一回言うわね」
いい先生だな。
名前はなんて言ったけ?
確か上坂京香だっけかな。
てかこの先生凄く美人だな。
「ラーメンに入ってるメンマどう思う?」
はて。
これは日本語の授業なのかな。
ラーメンに入ってるメンマとかどうでもいい。
ていうか普通に好きだし。
「渉くんはどう思う?」
「えっーと、自分は普通に好きです」
「うわぁ」
えっ、なんでそんな引くの?
自分で聞いといてなんなの?
なんで可愛そうな子見る目してるの!?
「あのさ、渉くん。メンマって言うのはラーメンでの規律を破ってるんだよ」
はぁ……。
何言ってんの?
「チャーシューは脇役の中のメイン。卵はラーメンをマイルドにする。で、何?メンマは材料もよくわかんないし」
「メンマはタケノコです」
「えっそうなの!ま、まぁいいわ。メンマは駄目。それで終わり」
なんなんだ、この先生。
こういう人苦手なんだけど。
……。
今日帰りにラーメン食べいこ。
風雷屋という学校から1番近くのラーメン屋にきた。
学校が終わるのが3時20分。
友達が部活行くまで少し話したから今は4時になってる。
この時間は人が少ないらしく、学校帰りに来る人なんて部活帰りの人ぐらいらしい。
それを分かった上で早めにきた。
多分俺の横にいる人もそうだろう。
上坂先生が横にいる。
上坂先生もラーメンの話をしたからか食べたくなって来たのだろう。
上坂先生はラーメンに集中してこちらに気付く事がなく黙々とラーメンを啜ってる。
ほんと黙ってれば超がつくほど美人なんだけど。
ラーメンをこんな綺麗に食べる人初めてみた。
麺を啜り、スープをレンゲで飲む。
チャーシューや卵、メンマ。
どれを食べても綺麗だ。
って、あれ?
「先生、メンマ食ってんじゃん」
「んんっ!」
僕の声に驚き身をブルっと震わせ啜ってる途中だった麺を一気に啜る。
「わ、渉くん!びっくりしたぁ」
胸を撫で下ろして笑顔になった先生。
いちいち動作が可愛い。
それよりもこれだ。
「先生メンマ食ってんじゃないっすか」
今は先生が可愛いとかの話をしたいんじゃない。
メンマの話がしたいんだ。
「あーこれね。今日君にメンマはタケノコって言われたらなんだが食べれる気がしてね」
タケノコだと分かれば食えるって。
「今まで食った事なかったんですか?」
「うん」
一言だけ返事をし麺を啜る。
僕も食べるか。
僕のは辛味ラーメンというそこそこ辛いラーメンだ。
これにはメンマが入っていないけど。
「渉くんのそのラーメン、メンマ入ってないのね。一個あげるわ」
「えっ別にいいですよ。美味しいんでしょ」
「ええ、美味しいわ。だけど初めて食べたからこれがどのくらい美味しいメンマかわからないの。だから貴方に食べて判断してほしいのよ」
そういうと先生はパッと自分の箸でメンマを僕の近くに持って行った。
美人でしかも学校の先生に食べさせてもらうのはどうかと思うような。
しかも間接キス。
先生は気にしないっぽいからいいけど。
「早く食べてほしいんだけど」
ぱくっといっちゃうか。
うん。
美味しい。
「どうどう?美味しい?今まで食べた中で何番?」
何番かな。
今まで食べた中だと、
「1番」
「えっ!このお店は相当な美味しいのね」
本当に1番かはわからない。
味なんて正直わかんなかった。
だけどこの人に食べさせて貰ったからか1番だって思えた。
もしかして僕はこの人の事……。
いや、まさか。
「こんなにも美味しい物知れて良かったわ。
ありがとう!」
僕はこの先生が見せた笑顔で確信した。
僕はこの先生に、恋をしたんだと。
その時僕の中で何かがコトリと音を立てて止まった。
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