第3話

戦争の勝ち負けは、本拠地の耐久による消失で勝敗を決する


耐久は

・戦争を行うプレイヤー達のキル数

・戦場に配置している占領した領土による時間減少

・そして本拠地への自爆テロ


『初心者』から『プロ』のプレイヤー達は基本的に領土占領を目的に突撃し、キルを稼ぐなりして領土を占領する


『卵』達は前線を制圧する『初心者』『プロ』たちの後方からの支援が流れであり、普通である


しかし、『戦士職』『魔法職』『盗賊職』とは別の、最大体力値半分と回復不可能を備えた『自爆』を行う者たちが少なからず存在するため、50人対50人の戦場は均等に配置させないと痛手をくらってしまう


自爆を行うプレイヤーは最短ルートを目指すため、ルート確保を余儀なくされる


そのため、最短ルート地点の少人数戦闘地域では個々の強さが求められるため、修羅場と化している



ghost22達がいるのは、まさに“修羅場“である



『ネグライア国』の重課金兵達は2台の課金馬車による突撃を行い、自爆を目論んでいたようだが…



「む!前方に戦士職1名確認!“JACK・Daniel“とかふざけた名前の奴だが、このまま轢き殺すぞ!!」


戦士職の男はもちろんジャックであるが、『F.war』におけるジャックは現世界1位ということもあり、それに憧れて名前をつけたがる新規もしばしば出没する


そのようなプレイヤーに限って力量は劣ってはいるが


「今ァ!!」


ジャックが叫ぶと、馬車目前に氷のトゲが地面を境界線の如く線引きされる


「チイッ!仲間がいるのか!!だが我々の馬車を舐めるなよ!!」


課金馬車には火炎魔法が搭載されているようで、通る場所を馬たちが口から炎を吐き、溶かし始める


「“通らせねぇ!!“」


ジャックは背丈以上の大剣を持ち出し、地面に向けて戦士職スキルの『スラッシュ』による攻撃を繰り出した


結果的に、森林地帯ということもあり柔らかな土は見事に地面を掘り返され、塹壕を作り出す


そして、塹壕に溶けた氷水と土が混ざり、土砂が塹壕を満たす


「っ!!しまっ──」


馬車の1台、その馬たちが泥濘に入り足を取られ転倒する


荷台にいた兵士10名は投げ飛ばされ、運がいいものは地面に


悪いものは氷のトゲに身を投げたされた


「威力上々、結構なトゲだ…ん!?」


続く2台目3台目は、1台目に起きた出来事を見て止まるかと思ったが──


「おいおいやべえ!マジかよ!!マジ神風じゃねぇか!!」


なんと2台目の馬車は、1台目の馬車を踏み台にして、そのまま突っ込んできたのだ


これにはジャックも驚き、退ろうとするが後ろから声がかかる


「ジャック、そのまま仁王たちして威圧しておけ」


声の主はghost22だ

風景に溶け込んだghost22は2台目の馬車に突撃する


「何すんのか知らねぇが…わぁーったよ!シッ!」


ジャックが大剣を地面に突き刺し、仁王立ちするのを見たghost22は満足そうに馬車を引く馬の腱を切り落とす


「なっ!隠れてもうひとりいたのか!!」


ghost22は馬車の操縦士から死角となっていたため、相手からすれば初心者の盗賊職が紛れていると思っていた





しかし、その盗賊職はghost22である


「一頭切り離す!!残りの馬で突き抜けるぞ!!」


操縦士は一頭切り離し、残りの馬で突き進もうとするも


「……“解体“」


ghost22の持つ、盗賊職の『解体』スキルで馬車の車輪を解体し始める


そのため、2台目の馬車はバランスを崩し操縦士含む荷台が横転する


「ウワァァッ!!」


課金馬車の車輪は、卵までの限界値である『解体』では分解されない


が、『プロ』レベルになるとスキルの上限が解放され、課金馬車でも解体することが可能になる


だが、課金馬車は解体せずとも馬を驚かせたり攻撃を加えると止められるため、『解体』スキルを必要としないのだ


しかし、そういった行為の対策として『ネグライア国』では荷台にいるプレイヤーから攻撃スキルが飛んでくる訓練を行っている


今回の場合、解体による対処が出来なかったために横転したので今後の対策案に出るだろう




1台目が突撃馬車、2台目が1台目のサポート兼代わりの突撃馬車となると、3台目は自爆テロを行う馬車が乗っている


そしてそこに自爆を行うものを守るための『プロ』レベルもいる


1台目、2台目が落ちたことにより3台目は止まらざるを得なくなるが、ghost22が所属する『シーク・ワイエット国』の本拠地まではあと少しだ


歩兵による突撃を決心し、いざ降りようとする馬の操縦士含む10名は、盗賊職に警戒をしつつも前進し始める


目指すは“JACK・Daniel“とかふざけた名前の向こう側


対する自分たちは魔法職、戦士職が5人、残り5人が自爆を行う兵士達


本拠地点からは荒ヤが見えるが動かずに自分達を見すえている


「荒ヤァ…!その口と体をバラバラにしてやるからな!」


1台目、2台目の馬車に乗り込んでいた生き残りが集まり始める


その数、15人


馬車事故によるキルされた運の悪かった者たちは本拠地に戻され、メインの戦場へと駆り出される羽目となったものの、本拠地の耐久値は互いに僅差の状態である


「敵の本拠地まであと少しだ!!これを成功させ我らに勝利を!!」


ゲームの中とはいえ、キャラ作りが丁寧な『ネグライア国』が1人


それを聞いたジャック、ghost22、荒ヤは各々別の考え方していた


(俺、無視されてねぇ?)


ジャックは1人落ち込む

世界1位とは言え正体を明かしたところで、このような日本鯖で遊んでいるような者では無いのは確かだ


それを全てのプレイヤーたちは周知しており、何を言ったところで偽者扱いされるのがオチだ


もう少しフレンドリーな人柄をしておけばと、ジャックは思った


(荒ヤ…合図くれねぇかな?)


ghost22は基本的にソロの人間だ

それに努力家でもあり、才能や能力なぞ持ち合わせていない


しかし、ghost22が元世界1位な理由は、敵対する相手の“全て“を知ることが出来たからである


VRによるプレイヤー達は、元はと言えば生身の人間である


どのような動作も再現出来るVRにとって、現実世界から引き継がれるのは才能や能力だけではなく、癖や動きまで引き継がれるのだ


基本的な全ての攻撃は“スキル“によるものだ

努力家であるghost22が攻撃スキルを全て覚えるのはなんら苦ではなかったが、癖や動きまでには時間を要した


『生まれ持った能力や才能がなければ作ればいい』を体現したghost22は、こうして『スロースターター』という才能を手に入れたのだ


戦闘のはじめは多少ダメージを貰うものの、相手の様子を伺いながらも、動作やしぐさ、癖を戦いの合間に覚え、敵を一網打尽にする



故に、今回の『ネグライア国』少数精鋭達の背後に潜み息を殺しながらも、機を伺い、集まる15人の仕草や癖を見抜き、何時でも狩れる準備を終えていた


そして、荒ヤの合図を待ち望んでいたのだ




(うるせぇのが1人喚いているが…誰だあいつ?まぁいいか…)


荒ヤは1人そういった思考をしていた


生まれ持った才能『指揮』を持つ荒ヤは、メインの戦場は他所に、自爆を行おうとする『ネグライア国』の少数精鋭をどう対処するか思考をめぐらせていた


別段、いくらレベルが高かろうと技術があろうと同じ人間であり、個人個人でトラウマや恐怖などを持ち合わせている


そこを突き、怒り任せに突進させ、両側遠方に配置させている遠距離部隊達に狙撃させても構わなかった


また、警戒して歩を止めて出方を伺っても、ghost22が『自爆』を巻き添えにして数を減らすだろうとも考えていた


当初、予定ではghost22の他に、囮の部隊ひとつを配置させる予定のはずだが、荒ヤの人望ゆえかそういった気配がないのは確かだった


ghost22が2台の課金馬車を壊してくれたことは予定には無かったが、計画がスムーズにいったのは確かだった


しかし、未だにghost22とJACK・Danielがどのような人物であるかは未知数だ


『自爆』持ちをしっかり処理できるのは『プロ』レベルでも少ない


勘づかれ、味方に守られ、殺されるのがオチだ


────ghost22にそれができるのか?


それを危惧し、両側遠方に配置させている遠距離部隊に指示を送り出す


「雑魚ども!!射抜け!!」


これが合図となり、事態が動き出す


────────────────────


はい、私はウィザードちゃん1000です


ウィザードちゃんって名前が気に入ってて、後に続く数字をずっと入力してたら1000にたどり着きました


正直恥ずかしいです

名前変えたいです


課金したら変えれるみたいですが…学生の身分ですし、親からのお小遣いなんて月1000円程度です


現実世界で洋服とか美味しい物食べてるとお小遣いなんてすぐに無くなります



ま、まぁ気を取り直しましょう!


私がプレイしている、『F.war』っていうVRを用いた戦争ゲーム

ファンタジー要素を取り入れた中世ヨーロッパ時代を風景に、戦車の代わりに馬車やらをイメージしたゲームらしいのですが


全く意味がわかりません

魔法使いには憧れていましたが…モンスターが出てくる訳ではなく、人の生き死にを目の前で見るという悲惨なゲームです


なんで始めてしまったんでしょう…そりゃネットの広告に掲載してた服とか可愛かったので、つい始めてしまいましたがね!



はぁ、しかしなんでこうなったのか…


チュートリアルはしっかりと受けました

男性はともかく、同じ同性である女性にまで攻撃を加え、殺し合うなんて思いもしませんでした


チュートリアルでこれなら戦争自体はどうなのか、と思い所属する『シーク・ワイエット国』大陸から近い戦争に参加しました


戦争へ移動するには、各国が所有するワープ装置が設置してあるところから飛ぶみたいです


飛んだ矢先、大きな叫び声が目の前いっぱいに広がって足がすくんでしまいました


────これが、戦争

────これが、命の奪い合い


頭で理解していても、体が思うように動きません


泣きそうです、無理ですこんなの

誰か助けてくれないでしょうか?


あ、男の人たちがこちらに来てます

助けてもらいましょうと思ったのですが


『なぁお嬢ちゃん、卵みたいだし俺らのパーティに入って1から10、手とり足とり腰とり教えてやろうか?』


なんと言いますか、男の人がいやらしい顔つきで私に近づいてきます


この顔には見覚えがあります、毎晩夢で見る顔です


この方ではないですが、夢の中でこういったニヤついた男性に頼ってしまい…暴力……とか…あ、ああああ



『悪いがそいつは俺の弟なんだ──』


救いの手と言うべきでしょうか、声のするほうを見ると、白肌にヨーロッパ系の顔立ち、金髪をかき上げた上半身裸にジーンズ、スニーカーという服装の男の人が、男の人たちに声をかけます


そこからは金髪の男性による蹂躙で全て片付き、事態は収束しました


──パーティ加入しますか?


私は迷いなくYesを押しました

もう変なのに巻き込まれたくないので、すぐに押しました


パーティには金髪の男性…JACK・Danielさん…ジャックさんですかね?


そしてghost22さん

この方は白の枯葉を纏った…ギリースーツでしょうか?をしており、顔はギリースーツのせいで暗くてよく見えませんでした


最後にえんじえるちゃん…かな?

少女みたいな姿をした白いドレスを着込み、背中がもろに見えてました


その背中にある、天使の翼みたいな刺青はとても印象的でしたね




話を戻します

現状を見るにジャックさんが仁王立ちして敵を通せんぼしてます


そのジャックさんの後ろで男の人が叫びました


「雑魚ども!!射抜け!!」


すると、今回の敵国でもある『ネグライア国』の敵たちに向かって矢や光線、でかい火の玉や氷柱を両側遠方から飛ばし始めました


見たことない魔法スキルばかりで見蕩れてしまいます



両側からの攻撃魔法を見た敵国の人達はそれを防ごうと、防御系魔法スキルを駆使して防ぎ始めます


ふと、真ん中の人達3人が円陣を組んでます


何かするのでしょうか?という疑問と同時に、展開された円形の光の防壁


防壁は敵国の人達を包み込み、全ての攻撃を防ぎます


いえ、跳ね返してます


「クソッ!!『巫女』居たのかよ!!」


なにやらジャックさんの後ろで男の人がニヤケながら叫んでます


跳ね返された攻撃は全てスキルを使ったものたちに当たり



────死にました


「ひうっ!」


遠くからとはいえ、人が死ぬ姿を見るのは精神的にきます


────わ、私はなんてゲームをしてるのだろうか


簡単に人が死にます

ゲームで、復活はします


しかし、それでも死ぬことに変わりありません


「お、オエエェェ!」


あまりの衝撃に耐えきれず、胃から何かが出ますが虹色のモザイクがかかってました


再現度が高いと言っても、嘔吐は描写しないんですね…と、感心しているのも束の間


「…“身代わり“」


というghost22さんの言葉の後、次の瞬間には『巫女』と呼ばれる人達が貼った結界内で爆発が起こり、結界が割れました


な、何が起きたのでしょう!?




「…っつぅ!いてて…派手にやっちまった」


パーティ共有会話を展開していたghost22さんからそのような発言がありました


「な、何が起きたんですか!と言うより大丈夫でしたか!?」


最初に何が起きたかを聞いたのは失敗でした

なので、慌てて身の心配をしましたが


「まず何が起きたかの説明を求める辺り、将来が楽しみだなァghost22ゥ!!」


ジャックさんに指摘されました


「…言ってやるなジャック、体力は減ったが致命傷は避けたから大丈夫だ。あとジャックは、俺の数字を英語で言うなダサく聞こえる」


「いいじゃねぇかよォ!っとぉ!?俺の出番だ!!」


ジャックさんの声を聞いて、顔を上げた私は状況をみる


『巫女』という職が貼った結界内での『自爆』による爆発、でしょうか?

それに耐えたのは戦士職のみでした


戦士職、魔法職、盗賊職の中で体力値の高いのは戦士職というのは公式ホームページにも載っていたので、新規の私でも知っていたことではありました


ですが、体力値を見る限りほとんどの敵が5割を切っていました



「楽させてもらうぜェ!ghost22ゥ!」


「だからやめろ」


ジャックさんは大剣を担いで、次々と敵を討っていきます


ある時は片手で頭をつかみ、顔面に殴りつけ

ある時は大剣を用いて、胴体をまっぷたつに

ある時は大剣を前に突き出し、突撃して3人ほど串刺しに



残り10人を切ったところで、敵は警戒心を高め始めました


「グッ…!クソ!何者だ貴様ァ!」


「プレイヤーネーム見ろよ、偽りのねぇマジモンだぜ?」


ジャックさんはプレイヤーネームを見せびらかしますが


「JACK・Danielに憧れる阿呆共は幾度となく見てきた!!そういう奴に限って腕は生半可なばかり!貴様も同じだろう!」


「散々殺して証明したんだがな…しゃあねえかァ!!“死屍累々!“」


ジャックさんはスキルを発動させると体全体を覆うように黒いオーラに纏われました


顔は見えず、目の当たりがぼやけるように赤く灯ってて、強そうな印象でした


「ふん、身体強化スキル『デストロイモード』に、体力減少と防御値減少を代償とし、爆発的な火力を生み出すスキル『バーサクモード』か…『狂戦士』だからこそできる身体強化だが──」


「…能書きは仕舞いにしろ、“遊んでやる“」


ジャックさんが大剣を横に振りますと、地面を抉り土の波と土煙が発生しました


土の波は10人の戦士職に直撃しましたが、軽傷で済んでいました

しかし、舞う土煙に視界を奪われてジャックさんを見失っています

私も土煙で見失ってます、なんでしょうかこの状況?


「っ!、隊長!左からっ!」


土煙が舞っている中で声がして、金属音が響きます


何も見えません、そういえばリプレイ機能ありましたけど他者様の視点からも見れるのでしょうか?


「うぐぉぉぉおおお!!」


「いい部下持ってんなぁ!!友達が一人しかいねぇ俺に対する当てつけかぁ!!」


どうやらジャックさんは友達が少ないようです


私は現実世界に……ひぃふぅ……人のこと言えませんね


後でシャックさんに友達申請してみましょう!…快諾してくれるかなぁ


「なんと馬鹿力だ!くそっ!また見失った!!」


外野からでは声しか聞こえません、土煙晴れないのでしょうか?


「フィールドはスキルによる影響をもろに出す。土煙も戦略のひとつではあるが…対策として“突風“などの魔法スキルが必要となったりする。課金アイテムにも、対策としてのアイテムはあったはずだが…ハズレアイテムに近いしな、要は使い道だ」


パーティ共有会話にて、ghost22さんが答えてくれます


「あ、あの、わ、私も突風スキル持った方がよろしいのでしょうか?」


「いや、下手にスキル発動によるフィールド効果を解除すると危険度が上がることもある、取らないのも吉日か……そろそろ決まるな」


ghost22さんの言葉を聞き、土煙の舞っている場所を見るとジャックさんが土煙の範囲外で姿を見せていました


なにかの構えをしていました


「“夜叉の構え“……“スラッシュ“」


『スラッシュ』は戦士職で初めに取れるスキルと聞いてます


「スラッシュは弱い攻撃のイメージありますけど…」


「最初に取れるスキルだからといって、その攻撃スキルが弱いはずはない。とあるスキルでは必殺スキルを取るために前準備が必要なスキルがあり、公式認定コンボでも弱い攻撃から強い攻撃に繋げることも必要となる。ジャックは俺ですら成し遂げることが出来なかったそれを、初めて全てのプレイヤーに認知させた一人でもあるんだ」


どうやら、お2人はすごい強い人らしいですね

どれくらい強いのか分かりませんけど


スラッシュによるスキルを振った攻撃

土煙を横に一刀両断した攻撃は、結果として9人がキルされ、一人、隊長と呼ばれた男の人だけが生き延びてました


「ハッ!『守護者ガーディアン』だったかてめぇ、まぁ体力は1割ってところだが?」


「…グゥ!ふ、ふざけた攻撃を!しかし貴様は体力減少の代価としてコンマ1ミリしかなさそうだがなぁ!」



──1割とコンマ1


個人戦ではコンマ1が圧倒的不利になってしまい、少し攻撃が掠っただけでもキルされてしまいます


「そうだなァ!俺は死に体だァ!だが、!!」


敵の隊長さんは、はたと気付きました


個人戦ではなく、戦争ゲームだということ


ジャックさんの後ろに待機してた口の悪い人が、勝ち誇った顔をして片手をあげます


「去ね」


と言葉と同時に下げた片手

そして、遠くから響く銃声のような攻撃スキルで、敵の隊長さんは顔半分無くしてキルされました



────嘔吐感はなくなりました

────むしろ高揚感が占めます


「“荒神こうじんくん“か、前見た時よりさらに腕上げたな」


「え、ぇと、荒ヤさんって人の部下かなにかです?」


「え?あぁ…荒ヤの前で荒神くんを部下扱いするなよ?荒ヤがキレるから……まぁ、部下と言うより側近だな…『盗賊職』の『天武職』シリーズに『狙撃手』ってのがあってな──」


「んなっ!?『狙撃手』持ちが居んのか!?クエストクリアしたやつらが、口々に運営死ねとかほざいてたあのクエストを!?」


「ジャック、お前は今の状態を解除して回復してから喋れ。…まぁ、『狙撃手』クエストは忍耐、集中、チャンス力が求められるからな…」


私には知らない遠い世界です

『天武職』というのもよく分かりません




「戦争は終盤かァ…」


「自爆による逆転も、もうないだろう…本拠地に戻ってのんびりするぞ」


「いいのか?活躍してっと戦争評価によるレベル報酬が沢山入るが?」


「卵にはレベル上げよりも攻略wikiでの勉強を重点的にして欲しいのが最善だ、初心者になったあとに人から聞くのはご法度だから…わかったなウィザードちゃん1000?」


急に呼ばれたので速攻で返事しました


「…元気なのはいいが、話半分聞いてなかったな…?」


バレてました





ゴーン…と鐘の音が響き、戦争が終わりました


『ネグライア国』と『シーク・ワイエット国』の戦争結果は僅差で『ネグライア国』が勝ちました


メインの戦場で『ネグライア国』か僅かにリードしてたのが勝因だったようです


正直言うと悔しいです

でもこのゲームが楽しく思えました


2人に出逢えたことが私には幸運だったのかもしれません


「…俺は一度、『ゲァル国』に帰る、ジャックはどうする…?」


「そうだな、俺は帰国するわ。オフの大会も近いしな…ghost22に負けねぇように腕磨かねぇと」


「そうか…じゃあこのまま解散す────」


「待ってください!!」


意外と大きな声が出ちゃいました

パーティ共有会話なので3人にしか聞こえませんけど…ghost22さんとジャックさんが驚いてます


「な、なんだよ嬢ちゃん、大きな声出して」

「…何か用か?」


「あ、あの、えと、と、友達申請しても宜しいでしょうか!ダメですか!わかりました!」


2人の顔が怖かったので、自己完結してしまいました


ですがジャックさんは引き止めました


「ま、待て待て!すぐそういうこと言うもんじゃねぇ!俺は構わねぇけど、次会えるのは未定だぜ?」


「…ジャックに同じく、『ゲァル国』だから敵同士になる確率は高い…それでもいいなら…」


はい申請送信ー!!Yesを貰いましたー!!


ノリで誘ってみましたが…なんだか嫌な予感しかしません…


「フ、フフ…俺にもダチが増えたぜぇ…!」


「…ジャック、お前のその言動がダメなんだ…改善した方がいいぞ?」


「うるせぇ!」


なんだか2人は仲睦まじいですね、私もあの輪の中に入れるように、努力しないと…!


「じゃあ解散するぞ…次会うときは敵か味方か…」


「上等だ、強くなってghost22をぶちのめしてやる」


「わ、私だって!負けませんから!」







解散したあと、『シーク国』に帰ったら“荒ヤ“さんから友達申請来てました


拒否したら何度も送ってきたので、ブラックリストに送ると申請が来なくなりました


ストーカーさんでしょうかあの人は?

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