始まりの村
ここは世界の端の村、ひと読んで最後の村【エンディア】。
そこに木刀をぶつけ合う二人の少年の姿があった。
名前はナイトとコナー、この村では有名な孤児のヒューマン二人組だ。
「もっと強くこいよナイト!そんなんじゃ俺には勝てないぞ!」
「何言ってんだよ!僕の方が一回多く勝ってるじゃないか!」
「はぁ!?バカ言え!1308対1307で今俺が勝ち越してるんだよ!」
「いやいや、それは数え間違いだね!僕の方が1308対1307で勝ち越してるんだ!」
「ちげぇよ俺だよ!」
「違う僕だ!」
「「ぐぬぬぬぬ...」」
二人のこのやり取りも日常茶飯事。
いつもこうやって広間に出て剣をぶつけ合ってはどちらが勝ち越したかといつ五十歩百歩を繰り返し、大人に「またいつものやつか」と笑われる。
だけれども今日の二人はいつもよりも気合の入り方が違う。
それもそのはず。
明日は二人にとってとても重要な日になるからだ。
二人はともに木刀の横殴りを顔面に喰らい地面にへばりついた。
「なあ、俺たちとうとう明日で十五になるんだよな。」
「うん、そうだよ。ついに明日だ。」
「そうか...」
さっきとは打って変わって物静かな口調で喋り出す二人、ナイトは短い金髪で、コナーは右目を隠す黒の長髪で地面の感触を感じながら向かい合う。
互いに真剣な眼差しを交差した後に二人は破顔した。
そして足を振り上げ、反動をつけてコナーが立ち上がり、手を差し伸べる。
「ようやく俺たちも...」
「僕たちも...」
「「冒険者だ。」」
この世界には魔族という害悪が存在している。
奴らは動くものすべてを蹂躙し、息の根を断つまで破壊を止めることはない。
それがたとえ同族であったとしても、だ。
魔族は人族にはない潜在能力というものがある。
身体能力の違いはさることながら、魔族には種別に与えられた権能というものが存在する。
例えばリトルドラゴンという名前の魔族は飛んだり口から火を吐くことが出来たり、キリンという魔族は雷を呼ぶことができる。
その魔族の危険性から国が会議の末に決めた魔族の処理を行うことができる年齢。
それが十五歳、つまり明日からだ。
二人の息が重なり、手を取り立ち上ったナイトはそのまま握った剣を相棒目掛けて突き出す。
コナーは不敵笑い返した。
「もう一回やるでしょ?」
「当然だろ!」
これは二人にとっての修行だ。
こんな辺鄙な田舎村に飽きた二人が、憧れる外の世界で生きていくための下準備。
木刀を振るい、手加減なしの全力の攻撃が飛び交う。
そして、修行は日が暮れるまで行われた。
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