第5話 真実
「そろそろ、可愛そうだからネタばらしするね」
さやかが、笑いながら言う。
「あのね、私たちね…………」
なんだ……?何を言われるんだ?
「私たちね、いとこなんだ」
「え……?」
さやかと、齋藤徹が、いとこ……?
血縁関係があるってこと……?
「ええええええええええ!??」
「なんだよ!そんなに驚くことないじゃん」
「うっ!うるさいぞ!齋藤徹」
だって、コイツはいとこであるさやかに告白したんだぞ?
え?これって普通のことなのか?
あれっ?日本ってこんな国だっけ??
「あははは」と、さやかに笑われる。
「あのね、徹さんはねこういう人なの」
こういう人だから、割り切った方が早いよ?と言われた。
「なんだよーこういう人って」
それでも意味わからない。
まぁ、割り切れってことか……?
「ってか、なんでその……」
「あ?なんだ?」
「こく……はくしたんだよ」
顔があっつい。
耳やら、顔やら、色んなところが熱い。
「うわぁーなおが照れてる」
「うっ……うるさい」
「かわいいなぁー」
なんだよ……この人たち……。
「で、なんで、告白なんてしてるんだよっていう質問が来たけど、その辺はどうなんですか?徹さん」
「なんで、そんな他人行儀なんだよー」
ごほんと、言ってから齋藤徹は、話を続ける。
「まぁ、本気で思ってはない。ただの演技だって思ってもらった方が早い」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー????」
なんだそれ!
今ので、すごい疲れた。
多分、一気に2日分のカロリー使った。
「で、小松……いやなおは、なんで今日はそんなにも早い時間に来たんだ?」
いきなりこの人、呼び捨てにしたし。
「それは……内緒だ。というか。なんで俺の出勤時間知ってるんだよ」
「えー内緒って何よー!!」
気になるじゃん、と純粋な瞳で俺を見つめてくるさやか。
かわいい。
「まぁ、とりあえず……」
うわ流された。
「俺達は、こういう関係だから、そんなに肩落とすなって!」
「肩なんて落としてない!!」
なんだコイツは……
めちゃめちゃイライラする。
「まぁ、なおがビックリするかなーってそのまま話通した訳」
笑いながら、補足説明をする。
「はぁぁぁぁ」
なんかもう、めっちゃ心配した。
すごい辛かった。
これで、本当に告白に返事したら俺は、どうしよか本気で悩んでたのに。
いっその事、ぐちゃぐちゃにして、何もかもを終わらせようとした。
けど、そんな勇気俺にはないってわかってた。
ドキドキが、止まらない。
安堵感でいっぱいなはずなのに、何だこの疲労感。
なんか、泣きそう。
さやかのことが大好きなのに、大好きなのに目の前で、取られるとか1番最悪。
「うっ……」
「どうしたの、なお?」
優しくさやかが言ってくる。
泣いちゃダメだ。
大人になったから、立派でいないと、とそう思ってても、涙は有無を言わずに零れてくる。
「よしよし」
さやかが、俺の頭を撫でながら抱きしめる。
俺は、さやかの肩に顔をくっつける。
このタイミングで、言っても迷惑しないかな?
「ねぇ……さやか」
顔を上げて、耳元で言う。
「ん?なに?」
お母さんみたいに、聞き返してくれる。
その言い方が、優しくってさらに涙が零れてくる。
「小松菜事件から、ずっと好きだった」
言った……言っちゃった……
「そうなんだ」
そうなんだ……そっか。
さやかは、俺に恋愛感情はない。
けどいいかな、別に。
こうやって、たまに甘やかしてくれる存在であって欲しい。
そりゃ、彼女になってもらった方が嬉しいし、仕事頑張ろうって思えるけどさ。
「なおのこと、好きだよ」
「え……?ほんと?」
好きだよと、一言。
「けど、今は仕事に集中したい」
「あっ……」
そっか、そうだよな。
俺よりも、仕事ができて、人一倍頑張ってるのに今、ここで、やめたら勿体ないからな……
「ごめんね、なお」
「いや、大丈夫。俺こそ、いきなり変なこと言ってごめんね」
振られたけど、気分はそう落ち込んでない。もしかしたら、さやかの好きは、俺を気遣って言ったものかもしれないけどいいんだ。
ゆっくりと、次第に俺の事を好きになってくれるんだったら、うれしい。
「ありがとう」
そして、
「これからも、こうしてずっとこういう風にしてていい?」
もはや何をいっているかは、わからないけど。
恥ずかしくなって、さやかの肩に顔をくっつける。
さやかは、なんて答えるのだろうか。
耳元で、さやかの声が響く。
「うん」
そして、
「大好き」
2人は、抱きしめ合い、そして、見つめあってまた、抱きしめあった。
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