第4話 夢であれ
さやか……
言い寄られているのは、さやかだった。
しかも相手は、この会社で1番イケメンと言われている、齋藤徹だった。
『だから、どうなんだよ、告白してから1週間も経ってるんだからいいよな?』
『あの……その件なんですが……』
聞いてない、こんなの。
なんで、俺に言ってくれなかったんだよ。
なんで、直ぐに断ってくれないんだよ。
早く
早く
嫌いだって言ってくれよ……
迷ってるってことは、さやかにも好意があるのか……?
やだ。
やだそんなの。
辛い。辛すぎる。
だったら……
イチゴジャムなんて、食べなきゃよかった。
簡単に、瓶の蓋を開けるんじゃなかった。
いつもと同じバスに乗ればよかった。
雨が降ってれば良かったんだ。
神様が、きっとそういうやつなんだ。
やっと晴れさせてくれたと思ったら、こんなに酷い仕打ちをするなんて。
俺は、何かしましたか?
なんで、こんなにも辛いことをするんですか?
もう聞きたくない。
俺は何も聞いてない。
黙って、階段から帰ろうかと振り向くと、
『お断りさせていただきます』
『は?』
え?
思わず、声が出た。
慌てて、口をてで覆う。
幸いにも、2人は気づいていない。
『私、好きな人がいるんです』
『ふーん』
誰だよ?と、齋藤徹が言う。
俺だって、気になる。
ここでもし、俺の知らない男の名前が出たらどうしよう。
『その人は、かなり弱いけど手のかかるやつで、曲がった性格だけど──
放って置けないんです』
誰だよ、それ……
俺って言ってくれないんだよな……
『へーここの会社?』
『そうですよ』
『じゃぁ、あいつか』
齋藤徹には、アテがあるらしい。
誰だ……?
『だとよ、小松なお』
「は?」
喋ってしまった!!!
まずいまずい
いつから、バレたんだ!?
あの時か!さっき喋っていた時!!
『おー出てこーい小松なお』
これは……出るしかない。
もはや道は、閉ざされた……
ゆっくりと、立ち上がり周囲を見渡す。
そこには、しっかりと、さやかと、齋藤徹がいた。
「こっち来い」
あれっ?なんでコイツは俺に命令してるんだ……?
渋々、2人に近づく。
「盗み聞きとは、なおも大人になったんだねぇ」
なんで……
なんで、この2人はこんなにも落ち着いてるんだ?
「なんだよ、訳わかんないみたいな顔しやがって」
「そりゃそうですよ、なおはこう言うの疎いんですから」
「えっとー?」
意味がわからない。俺だけが、この状態を知らないのだぞ!?
「そろそろ、可愛そうだからネタばらしするね」
さやかが、笑いながら言う。
「あのね……」
ここで、俺はさやかが告白されたという状況を見てしまい、ヘロヘロな状態なのにらさらに2人から衝撃的なことを聞く。
「あのね、私たちね…………」
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