06 心電図

 お姫様の足を恭しく持ち上げて、新しいくつを履かせる。

 くつは、柔らかい革のラウンドパンプスで、小さなリボンがチャーミングだと思う。パステルピンクの、彼女のためだけに作られたくつ。


 長い付き合いだったベッドから降りようとしている彼女の足は華奢すぎて、心が痛むくらい。


 それでも、地に両足をつくと、しっかりとした眼差しが私を真っ直ぐに見つめてくる。

 そうして、いつも勇気づけられるのは私の方なのだった。


 真新しいくつで、リノリウムの床を踏みしめる彼女に、用意しておいた花束を渡す。

 小さなブーケだが、彼女にちょうどいいサイズなのだと、私が勝手に判断した。

 お荷物にならない方が良い。私の気持ちのように。


 花束を受け取った彼女は、どうしてか甘やかな声で言う。

「ありがとう」

 と。


「どういたしまして」

 努めて優雅に柔和に返す。

 そんな私の心電図は、ごく不規則な動きをしているに違いなかった。

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