05 道草
君は手のひらを開き、僕は拳を握る。
グーとパー。
君の勝ち。
「私の勝ちだね」
君はそう笑って、すぐに手を引っ込めてしまう。かすかに色づいた綺麗な指先を、名残惜しく見つめるのは僕ばかりだろう。
君には必要のない寄り道は、僕には必要な寄り道だった。いつだって。まさに、今だって。
子供の頃に通っていた駄菓子屋がまだ潰れないであるんだよと声をかけたら、君は嘘ぉ!と大袈裟に喜んで、僕について来てくれたのだ。
ラムネくらいはおごるよと言ったけど、彼女は勝負にこだわった。
子供の頃のように。
残照。瓶の中のビー玉が光を弾いて、僕は目を細める。彼女のご機嫌そうな鼻歌は調子っ外れで、まるであの頃のままのよう。
アスファルトからは、雨上がりの匂いがしている。
水たまりに映るふたりの姿は、現実のそれよりもっと近づいて見えた。
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