第4話かいけつはくもり、穏やかな実況は終わりでしょう。

 さて、ここまでのおさらいをしておきましょう。


 連続少女誘拐犯の山田は、部室に小学五年生の千歳ちゃんを監禁中です。


「いや、まったくこれっぽっちもおさらいになっていない。俺が何人もさらったようになっているだけじゃないですか!? 原先輩こそ、話をさらってますよね!」


 という感じです。ちょっと何言ってるかわかりません。とはいえ、ここはさらっと流しましょう。さらっただけに。


「いや、うまくないですよ? まったく、ドヤ顔でこっち見るのやめてくれませんか?」


 まあ、山田のつまらない顔を見ても仕方ありませんので、話を進めます。


「はい、はい。もういいですから」


 さて、スイカを無くしたという千歳ちゃん。困っている彼女に対して、美羽ちゃんと上村君が何やら言い争いをしていたというところで、山田が邪魔をしています。


「邪魔してるのは、明らかに原先輩ですけどね。俺が探しに行くのも邪魔してるし」


 でも、原先輩はそんな山田の仕打ちにもめげずに実況を続けています。


「何故、俺が悪いようになる?」


 それは山田ですから、仕様ですね。しょうがないです。では、話を進めます。


「まあ、『スイカ落ちてなかった?』って聞いたら、ここじゃあ西瓜すいかを想像するよね。だから聞き方が悪いって注意したんだよ」

「そんなん、思いませんって。ウチ、いいましたやん。定期入れに入っているって」

「だから、それ後で付け足しただけでしょ?」

「それで十分ですやん。なんか問題ありますか?」


 再び言い争う、上村君と美羽ちゃん。山田はこの事態を収拾することが出来るのか!? いざ、山田!


「もしもし? 教務課さん? 『くさきちとせ』って書いてある定期入れ、落し物として届いてないですか? え? ある? よかった。じゃあ、あとで取りに伺います」


 そう、彼は山田。

 その場の空気をいっさい読まず、内線電話で全てを無かったことにする男。


 問題を解決して得意満面になっているが、実際に今までの時間を過ごしていた我々はどうするのかという二人と、その二人への千歳ちゃんの信用をぶち壊しにした山田。


 それも、たった一本の電話で。


 しかも、前半後半に分けて話をする理由があったのかという原先輩への誰かの信頼もぶち壊しにしてくれました。さらに言うと、『え!? この話ってこれで終わり!?』みたいな残念感も生んでくれています。


「いや、なんか俺が全部悪いみたいな雰囲気出すのやめてくれません? それに、原先輩のは、なんだか無理がありますって。っていうか、別にオチとか求められても困りますよ。俺は普通にしてるだけですからね」


 そう、彼は山田。ひとよんで、山田。お巡りさん呼ぶで、山田。


 性犯罪者と普通の顔のお面をかぶったロリコンで空気を読まない男。そしてその実態は、山田なのに自らを普通と名乗るツッコミ役。


 まあ、『登場人物紹介、山田へん!』はこんなものでいいでしょう。


「長いわ! あと、アクセント間違ってるし!」

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