第3話もんだいははれ、ところにより……実況は原でしょう。

 もうそろそろ皆様もお気づきでしょう。このまま山田に任せていたのでは、話が一向に進まないという事が。


 その通りです。その通り魔です。山田です。


「いや、明らかに進まないのは原先輩のせいですよ。容疑は原先輩にこそありますよね? それと、一体誰に話してんですか?」


 しれっと責任転換する山田容疑者。ついでに、ぼけ殺しまで発揮するという残酷な仕打ちを先輩にしてきます。でも、それでも負けないのが原先輩のいいところ。


 よろしいです。解説します。山田を部室の前で立たせていた分は、解説でお詫びしましょう。


「それ、俺に対して何もお詫びしてませんからね?」


 はい、はい。山田は放置魔です。


「いや、絡むだけ絡んで、それは無いんじゃないですか?」


 そもそも、千歳ちゃんは食堂にいたのです。美少女である千歳ちゃんは、大学の部室の鍵を持っていません。当然、いい子です。山田のように、こっそりとスペアキーを入手するという、姑息な事もしていません。


「俺は入部の時にもらいましたよ!」


 山田は放し飼いしているので、放置です。


「いや、飼ってないでしょ? あっ、こないだの飲み会代。俺、まだ先輩から返してもらってないですよ?」


 そんな昔の事は今は関係ありません。今は、千歳ちゃんの事です。

 まあ、そこで、上村君が見つけたんですよ。


「まあ、そうだね」

 そして、そのまま部屋に連れてきたわけです。山田が同じことをやれば、間違いなく通報されている所でした。よかったですね、上村君。部員から逮捕者がでなくて。


「まあ、それは日ごろの行いってやつかもね」

「日ごろの俺って、一体何やらかしてるんですかね?」


 さあ? 懺悔は教会でしてきましょう。


「何もないですよ! 俺には!」


 あきらめたら、そこで試合終了ですよ、無能力者山田。


「俺に、何を抗えと? 意味もなく、安西先生ととある世界を出すのやめてくれません?」


 まあ、安西先生はともかく、山田は試合に出ていませんので、そもそもこの話はありませんでした。試合にすら出てない人間に、酷な話はやめましょう。


 ですので、話を戻します。


 そして、そこに美羽ちゃんが来たのです。最初から元気のなかった千歳ちゃんに、美羽ちゃんが話を聞いた所、スイカを無くしたということでした。


「え!? スイカを無くしたの? 千歳ちゃん」

「うん」

「どこか思い当るところ無いの? 一緒に探しに行く?」


 これ幸いに、美少女と二人っきりになろうとする山田。その笑顔の仮面に隠された醜悪な笑顔の仮面をはがして、一体何を見せつけるのか! この変質者、山田!


「俺、仮面付けすぎでしょ? 見せつけるにしても、そもそも素顔ですよ、これ」


 それはさておき、話を戻します。


「戻すんですね? 俺、いきますよ? 多分、落し物として教務課に届けられてるでしょ?」

「そんなん、もうやったよ。電話で聞いてみたら、そんな落し物ないって言うとったわ」

「そうなんだ。でも、だったらなんで探しに行かないんだ?」

「それが、尾田さんと話が食い違う原因なんだよね」


 事情をよく飲み込みもせず、突っ走ろうとする山田。それを冷静に諭す美羽ちゃんと上村君。さっき、言い合いをしていたことを説明していたにもかかわらず、すっかり忘れていた山田は、きっと取扱説明書をよく見ずに、家電を買ったら使うタイプなのでしょう。


「それって、一般的にそうでしょ? 大体わかるし」


 そう。多くの山田がそうであるように、人類は家電の取り扱い説明書をよく読まない。よく読まないから、途中で壊れる。そして、便利な機能がついているにもかかわらず、それを使いこなす事すらできずにいる。これだから、山田って奴は! 喧嘩と電家を両方売ってるんかい!


「まあ、たぶん使いこなせるのは一部でしょうね。ていうか、全国の山田さんと家電販売店さんに謝ってください。けっこう失礼な事言ってますよね? あと、電家ではなく、家電ですよ」


 それは山田が自分でやってくれと言いたい。己が山田であるから悪い。家電はゴロが悪い。


「いや、何よりも俺に失礼ですからね! あと、何でも自分本位でまとめないでくださいよ。これでも、結構考えてるんですからね」


 まあ、そんな頭の悪い山田は放置します。では、お話は後半へつづく。


「だから、誰と話してるんですか!?」

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