閑話:ダインとヴィオルのその後の話

ダインとヴィオルはアンナがヴァンダイクを殴った後も、マチョリンスキー家に残っていた。面倒なのでさっさと帰りたい気持ちはあったが、決闘後の敗者が何を仕出かして何かを要求する可能性があるので、仲裁の立場はしばらく残るのが義務付けられていた。


で、案の定……


「あの極悪令嬢に決闘を申し込みたい!!!」


ヴァンダイクが起きて状況を把握した後、怒りで顔を真っ赤にして言い放った一言がコレだ。ダインは思わず呆れた溜息をつく。


「つまり、お前さんとアンナ・ステインローズで決闘がしたいと?」


「あぁ!あんか不意打ちも同然のやり方で攻撃してきてやられたとあっては我が家の恥だ!正々堂々勝負して見事に勝利してみせよう!!」


本当に呆れ果てて物が言えなくなるダインとヴィオル。

そもそも、不意打ち同然だろうと「鋼鉄の筋肉」と呼ばれた男が、女の拳一つでやられてる時点でどうかと思うし、攻撃されたのだって、元々謝罪を先にしなかったそちらに非があるので自業自得だとしか言えない。ヴィオルは何と言って返そうか思案していると……


「分かった。お前さんの要求を受け入れよう」


ダインの言葉に驚いて目を見開くヴィオル。ヴァンダイクはダインの言葉に嬉しそうに顔を綻ばせるが


「あぁ、ただし今回の一件はキッチリ陛下にご報告させてもらうがな。お前さんがアンナ嬢に拳を受け倒れたから、お前さんがアンナ嬢に再戦を申し込みたいと」


「なっ!?何故陛下にそんな報告を!!?」


「仕方なかろう。それが決まりじゃからの」


そう。決闘の後、更にまた決闘を申し込む事例が多発し、貴族同士の争いが激化するのを避ける為、2回目の決闘要求は、その旨を全て陛下に報告し、場合によっては陛下自らが仲裁の立場に入る決まりになっている。


「そういう訳じゃ。お前さんがどうしてもと言うなら陛下に報告するがどうする?」


「い!?いや!?やはり!!?少々大人気ない発言だった!!?今のは忘れてほしい!!?」


ヴァンダイクの言葉にダインは「そうか」とだけ言って、ヴィオルを連れてマチョリンスキー家の屋敷を去って行った。


「王家に自分の家の恥を知られたくないんでしょうね……最も、もう王家の1人に伝わってますけど♡」


「言うてやるな」


ダインは孫娘同然に育てた者の言葉に苦笑しつつ、ふと、ある事を思い出した。




「そういえば……噂話程度の話じゃが、ステインローズ家では、ステインローズ家の後継者をアンナ・ステインローズ嬢にするという話があるらしいぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る