37.メルルが進む道

私達が帰ろうとする道すがら、私達はメルルに呼び止められる。私達は何だろうと思ってメルルの方を振り返る。


「あの……その……私が壊した物は何とかして払います……!だから……」


そう言ってメルルはひたすら頭を下げ、私達の方を見ようとしない。だから、私は無理矢理メルルの顔を上げさせ、私の顔を見せるようにさせた。


「ふえぇ!!?お嬢様!!?」


「ねぇ、メルル。正直に言いなさい。メルルはマチョリンスキー家にいたい?それとも、私の専属メイドとして残りたい?正直な心で話せばいいわ」


「そ……それは……」


メルルはどこか迷うように視線を彷徨わせていたけれど、すぐに私の瞳を真っ直ぐに見返し


「最初の頃は……確かに……マチョリンスキー家に戻る方法ないかって考えた事もありました」


そりゃそうよね。あんな腐った筋肉家族だけど、家族には違いないものね。


「だけど……今は……普通の女の子らしい仕事をしてるのが……楽しいんです……失敗ばかりですけど……それに、皆様が優しく接してくださいます……だから……私は……メイドを辞めたくないです……」


「……そう。あなたの気持ちはよく分かったわ」


私はそう言って、メルルが壊した物の請求書を、彼女の前でビリビリに破り捨てた。私の行動に驚くメルル。


「お嬢様!?一体何を!!?」


「あなたがマチョリンスキー家に戻りたいって言うんだったら、私はこの請求書であなたをこの家のメイドとして縛りつけていたわ」


「えっ……?」


「けど、あなたはこっちにいる事を望んだ。だから、もうこれは必要ないでしょ」


私はニッコリと笑ってメルルにそう言った。呆然と私を見つめるメルルに私は更に


「さぁ、メルル。帰りましょう。帰ったらあなたの仕事は沢山あるんだからね」


「はっ!はい!お嬢様!!」


私にそう声をかけられ、急いで私について行くメルル。もう夕方になっているせいか、メルルの頰は夕焼けのように赤く染まっていた。





「……アレ……完全にお姉様に堕ちましたよね……」


「アリーお嬢様。ファイトです」


「これも一つの試練です」


「うぅ……!?他人事だからって……メルル……とんでもない強敵ですよ……アレは……」

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