35.ステインローズ家からの請求書

その莫大な金額に身体をプルプルと震わせる筋肉ダルマ。


「ふざけるなぁ〜!!?何だ!?この莫大な金額は!!?この極悪令嬢め!!!」


筋肉ダルマは顔を真っ赤にさせてそう叫んだ。人1人に莫大な金を要求するなんて非人道的と思ってそうね。でも、残念ながらこれは正当な請求書なのよね。


「申し訳ありませんがこれは正当な請求書です。彼女、メルルはうちのメイドとして働き始めた時に壊した額の総額です」


「ふえぇ!!?」


私の言葉に今度はメルルが驚いた。お父様やお母様はメルルが皿や壁などを壊しても、全然気にせずにニコニコしていから、弁償額があったなんて思いもしなかったんだろう。


「これは不当な請求書だ!!?どうせそこの小娘が書いた不正な請求書で……」


「じゃが、この請求書。アルフ・ステインローズの名前が記載されておる上に、ステインローズ家の家印まで押してあるぞ」


「何ですと!!?」


いつの間にか私から請求書を取り上げていたダイン様がそう言って、筋肉ダルマは目を見開いて驚く。


まぁ、お父様もこんな事態が起きなければ請求書など作るつもりもなかったであろう。私が事の経緯をお父様にも話したら、「少し待ってなさい」と言われ、私に渡したのがこの請求書だった。もし万が一にマチョリンスキー家がメルルを取り戻そうとアホな事を言ってきたらそれを突きつけなさいと。


「し……しかし……!?アルフ殿は娘に甘いと聞く……!大方娘に頼まれて……」


「しかし、ここの証人者欄にアスラン陛下の直筆サインと王印があるぞ」


「な!?何ですって!!?」


更にダイン様の言葉に、先程よりも目を見開いて驚く筋肉ダルマ。いや、まぁ……私も流石に驚いたんだけど……


請求書を書く時、請求書の内容や請求額が間違えていないか、第三者にチェックしてもらう事がある。それが証人者だ。その証人者は確かに自分よりも立場が上の人になってもらう事が多いとは言え、まさか陛下に書いてもらうなんて……そういえば……


「これだけでは納得しない可能性もあるか……ちょっと待っていなさい。アスランの奴を叩き起こしてくる。決闘には必ず間に合わせてみせるさ」


と言って早馬飛ばして行ったんだけど……まさか……お父様本当に陛下を叩き起こしたの?


まぁ、いいか。これでこの請求書が正当な物である事はバッチリ証明されたものね。


「では、もう文句はありませんよね。メルルを取り戻したいと仰るなら、ちゃんとこの額をステインローズ家にお支払いくださいませ」


「ぐぬぬぬぬ……!!?」


筋肉ダルマは悔しそうに私を睨む。

お父様曰く、マチョリンスキー家はこの額を支払えないだろうと言っていた。マチョリンスキー家はその筋肉を得る為のトレーニング器具を沢山買っている。しかも、かなり豪華なやつを。おまけに、昔は色々戦争やら何やらマチョリンスキー家のパワーは活躍出来ていたが、今かなり平和なこの時代にマチョリンスキー家のパワーはほとんどいらなくなってきている。故に、現在のマチョリンスキー家は旧い名家というだけで、財産的には赤字気味らしい……まぁ、それも私には関係ないのだけれど……


「あっ!そういえば……」


私はふと、ある事を思い出し、せっかくだからやっていこうと思い、筋肉ダルマに声をかけた。

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