32.カトレア・マチョリンスキー

それはまだアイリーン様が王であった時代。


1人の少女は恋をしていた。少女が恋に落ちた相手は、ムキムキの筋肉が美しいマッスル・マチョリンスキー子爵。

しかし、少女は平民であり、なかなか貴族である殿方にアピールする事など出来るはずがありませんでした。少女はせめてあの方と同じような筋肉を身につけようと必死で己を鍛え始めました。


ですが、少女はどれだけ重たい重りを持って走り回ったり、筋力トレーニングをしても、あの方のような筋肉どころか、力こぶ一つ付きませんでした。


私はあの方とは縁遠い存在なんだと少女は嘆いていましたが、そんな少女についに転機が訪れました。


ある日、少女の暮らす町で大量の魔物が襲いかかってきました。町の人が皆逃げ惑う中、少女は鍛えあげた怪力で魔物達を撃退したのです。少女にとっては、魔物退治もトレーニングの一環だったので、少女にとってこれぐらいは朝飯前でした。


「へぇ〜……なかなか面白い魔力属性の持ち主ね」


なんという偶然というべきなのでしょう。この日、たまたまこの地の視察に来ていたアイリーン様が、少女を見てそう呟いたのです。しかし、それだけではありませんでした。


「あなたの魔力属性の上位版のようね」


「えぇ、大変素晴らしい力でした」


なんと、アイリーン様の隣には、この町の領主でもあるマッスル様も一緒にいたのです。少女はあまりの驚きに言葉が出ませんでした。


ですが、少女の驚きはまだまだ続きます。少女はなんとアイリーン様の推薦で、マッスル様の所で仕える事が出来るようになったのです。

こうして、少女はマッスル様を支え、時に一緒になって身体を鍛え、やがて……


「私のパートナーは君でなければダメだ。どうか、私と結婚してほしい」


まさかの憧れの人からのプロポーズに少女は涙が止まりませんでした。


こうして、少女とマッスル・マチョリンスキー子爵は結婚。子を産み育みながら、身体を鍛える事も忘れずに、2人仲良く暮らしていった。



これが、マチョリンスキー子爵家初代奥方、カトレア・マチョリンスキーの物語である。

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