31.無駄に文句を言っても無駄でしかない
メルルの兄のアルト様がなんか負け犬の遠吠えをしているわ。うん。バカなんだろうか……とりあえず何か言い返してやろうかと思ったけれど、私より先に返事を返したのはダイン様だった。
「ほう?つまり、お前さんはワシが不正を見抜けぬ愚か者と言いたいのか?」
「ひいぃ!!?」
あの筋肉ムキムキ男が、ダイン様のひと睨みで怯えて縮こまってしまった。けど、無理もないかもしれない。それだけダイン様は強烈な殺気を放っていたから……思わず私も身構えてしまう程に……そんな私はチラッと見て愉快そうに笑うダイン様。
「そもそも、審判はそちらの執事、重りをつけたのもそちらの従者なのにどうやって不正を行う?」
が、すぐにその笑みを消して真顔でそうアルト様に正論を叩きつけるダイン様。ダイン様の言う通り、重りを取り付けたのはマチョリンスキー家の従者達。審判をしていたのもそちらの執事だ。不正を行うなんて出来るはずがない。
「それは……!?その……!?魔法で……!!?」
「ワシが魔法の不正を見抜けなかったと?それとも、ワシがステインローズ家に買収でもされたと言うのか?」
「うぐぅ……!?それは……!!?」
ダイン様は魔法省の重鎮だ。魔法を使用したなら見抜けないはずがないし、公爵家という格上の貴族が、私達伯爵家に買収されるはずもない。アルト様はこれ以上の反論が出ずに押し黙っていると……
「待ってください。ダイン殿。息子の言い分も理解出来ます。あの娘は我が家の筋肉を受け継いでないにも関わらず、息子に勝ったのだ。不正を疑ってしまうのも無理からぬかと……」
ヴァンダイク様はいちいちマッチポーズをとりながら、息子を擁護するような発言をする。まぁ、確かに……メルルみたいな華奢な娘が600kgのバーベルを持ち上げるのを不思議に思うのも無理もない話だろう。当然ながらそこには秘密がある。
「ヴァンダイク様は「ウルトラハイパワー」はご存知ですか?」
今度はダイン様に代わりヴィオル様がヴァンダイク様にそう尋ねる。
「当然です!「ウルトラハイパワー」とは、「マチョパワー」の上位属性魔法で、我が一族の初代の奥方様がそれを有していて、華奢ながら筋肉モリモリだった初代様を背負い投げしたの我が一族で有名な……ハッ!?まさか……!!?」
「そのまさかです。彼女、メルルちゃんの魔力属性は『ウルトラハイパワー』です」
ヴィオル様はメルルの魔力属性鑑定結果をヴァンダイク様につきつけた。
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