29.決闘開始

私達は決闘を行う為に屋敷の庭まで案内された。


「父上。これは何なんですか?」


ヴァンダイク様に呼び出されたらしいメルル兄ことアルト様は不思議そうに首を傾げてヴァンダイクに尋ねる。


「お前があの勘当した娘をバカにしたからと正式な決闘をお前に申し込んできたのだ」


「はっ?あの愚妹が私と決闘を?冗談でしょ」


アルト様は鼻で笑いながらそう言えば、周りの人間もおかしそうに笑い出す。一際高そうな服を着た筋肉ムキムキな人はメルルが言っていた家族かしら?マジで家族全員揃ってマチョなのね……ってか、喋る度にマチョポーズするのやめてほしいんだけど……


「やるだけ無駄ですよ。父上」


「私もそう進言したのだがな。アスカルド公爵家まで出された正式な決闘の申し込みだから断る訳にもいかん」


アルト様とヴァンダイク様はマチョポーズとりながら会話する。あぁ〜……なんかもう面倒になってきたわ……さっさと会話を進めましょう……


「では、決闘で勝った時の褒賞ですが、こちらが勝った場合、メルルにしっかり謝っていただきます」


「それだけいいのか?なんだったら我が自慢の「鋼鉄」と呼ばれた筋肉を触ってもよいのだぞ?」


ヴァンダイク様はマチョポーズをとって私にそう言ったが、私は「いえ、結構です」と言ってアッサリと断った。


「それで、そちらが勝った場合はどうしますか?」


「こちらからは何も。勝つのが分かってる勝負で請求などしたらマチョリンスキー家の恥ですからな」


と、どこまでもメルルをバカにしたマチョポーズにだんだんと腹が立ってきた。うん。これは負けた時はとことんまで突き詰めてやりましょう。


「では、決闘ルールについて説明します」


マチョ執事が決闘のルールを説明し始める。

ルールは至ってシンプル。バーベルをずっと上げ続ける事だ。もちろん、ただ上げ続けるだけじゃない。3分経過毎に10kgの重りを両側につける。つまり、3分経過する度に重さが20kgずつ増していく。そして、耐えられず先に下ろした方が負けの単純明解なルールだ。


「ふん。なんだったらハンデをつけましょうか?」


私ではなくメルルを見て小馬鹿にしたようにそう言うアルト様。メルルは何か言おうとするが、私がそれを制して


「結構です。後で何か言われたくありませんし」


「……後悔しても知りませんよ」


後悔するのはそっちだけどね。私は今度は不安そうにしているメルルを見る。


「大丈夫よ。あなたはいつも通りにやればいいわ。自分と私を信じなさい」


「私と……お嬢様を……?」


メルルはしばらくポカンとしていたが、すぐに決意を秘めた瞳で私の方を見返し


「分かりました!自分とお嬢様を信じて頑張ります!」


うん。これでもう大丈夫ね。さぁ、後はこのうざったい筋肉家族にメルルの実力を見せつけてやるだけだわ。


「それでは、決闘を開始します」


筋肉執事の合図で決闘が始まった。アルトもメルルもその合図に従いバーベルを上げた。

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