16.グランズール帝国

ここは、ウィンドガルより北方にある大国「グランズール帝国」その皇城内の一室、リチャード皇太子の部屋での事


「おい。リチャード。聞いたか?ウィンドガル王国は来週開催する各国内の魔法学園交流会に、我が国の魔法学園も招待するみたいだぞ」


リチャード皇太子に気さくに話しかけるのは、この国の侯爵家の一人息子、マリウス・ディアン。普通なら身分が違うのに気安く話しかけられたら、即不敬罪になりそうなものだが、リチャード自身がそれを全く気にしてないので、マリウスも一応公の場ではちゃんと貴族らしく振る舞うが、2人で話す時は素の自分を出すようにしている。


「当たり前だろ。うちのバカが問題起こしたとは言え、伝統ある魔法学園の交流会でうちの国を無碍に扱う事は出来ないだろう」


リチャードはつまらなさそうにそう言った。

各国内の魔法学園交流会は毎年行われている。いわゆる、各国の魔法学園が集まって、魔法の交流を深めていこうという行事なのだが、今年はウィンドガル王国で開催されるので、昨年問題を引き起こした影響で、グランズール帝国は拒否されるのではという噂もあったのだ。


「まぁ、そりゃそうか。向こうも俺達の国を無視するなんて出来ないわな」


マリウスも軽く溜息をついてそう言った。これでこの会話はお終いかと、リチャードは思ったが……


「あっ、そういえば……あのウィンドガル王国の双子王子が婚約解消したって話だぞ」


「何?」


何気なく呟いたマリウスの言葉にリチャードは反応した。


「双子の王子と言ったな。2人とも婚約を解消されたのか?」


「あぁ、らしいぞ。ウィンドガルの知り合いから聞いた情報だから間違いないぜ。まぁ、弟の方はいずれなるんじゃないかと言われていたけれど、まさか兄の方までなんてって驚いてたなぁ〜……」


マリウスが色々言っていたが、リチャードは別の事を考えていて頭に入っていない。


「あっ!でも!あのウィンドガルの噂の美少女令嬢がフリーになったんだよな!俺!声かちよっかな!」


「やめておけ。お前もうちの弟のようになるぞ」


リチャードはその言葉だけ聞き取れたので、マリウスにそう忠告した。何故なら、リチャードは知っている。あの妹に関われば、彼女が絶対許す事がないことを……あの美しくも強く輝かしい彼女が……


いつものつまらない魔法学園の交流会だと思っていたリチャード皇太子だったが、マリウスの言葉で、リチャード皇太子の気持ちはかなり昂ぶっていた。

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