外話:リリカルスクールラブ逆ハールートBEのお話 後編
お姉様の手紙を読んだその日の夜……私はただひたすらに走って逃げ出していた。必死に何かから逃げ続けていた。
お姉様を見殺しにするに至った自分の責任
ステインローズ家の者としての自分の立場
お姉様が死ぬのは当然だと嘲笑う人々
お父様やお母様のお姉様を失い悲しむ姿
お姉様そのものから……
それとも……私自身なのか……
もう、私自身も何から逃げているのか?何のために逃げているのか分からないまま、私はただひたすらに走って逃げ続け……そして…………
目を覚ましたら、そこは古びた小さな教会だった。
「よう。ようやく目が覚めたかい」
私にそう言って声をかけたのは、シスターの衣装を着ているが、言葉や態度がシスターのそれとは思えない人だった。
「ここは……?」
「ここはどこの国にも属してない認可を受けてない教会ってか、もう孤児院だな。あんたが倒れてるのこの子達が見つけて私がここまで運んだのさ」
よく見てみると、シスターの周りには沢山の子供達の姿があった。孤児院って言っていたけれど、もしかしてこの子達は親に捨てられたり、親を失った子達って事かしら?
「さて、目覚めて早々に悪いが、あんたこれからどうするか自分で決めな。出てくのも自由。ここに残るも自由。けど、ここに残るならちゃんと働いてもらうよ。それがここのルールさ。あんた、いいとこのお嬢様っぽいけど、子供の相手ぐらい出来るんだろ」
シスターは私を真っ直ぐに見てそう問いかけてきた。
すぐに出て行くべきだ。私の中の何かがそう訴えていた。実際にその通りだと思う。私はここの人達に迷惑をかける訳にはいかない。すぐにここを出て行くべきだろう。
しかし、出て行ったところで、私に逃げ場所なんてあるのだろうか?多分、私は今ここを出たところで、何か分からないままに逃げ続けるだけでしかない予感がした。私は………………
そして、結局答えを出せない私に業を煮やしたシスターが、私を強制的にシスター見習いにして、子供達に勉強を教えたり、掃除や洗濯なども、子供達と一緒になって教わりながら日々を過ごし、夜には一応シスター見習いらしく神に祈りを捧げていた。
「熱心だね〜。あんたも。もしかして、あんたは神様を信じてるのかい?」
シスターが欠伸をしながらそう聞いてくる。そのシスターらしくない姿に、私は苦笑いを浮かべる。もう彼女のこの感じも慣れてしまっていた。
「シスターは信じていないんですか?」
「当たり前だろ。そんな万能な存在がいるなら、あの子達はこんな私を親として接する事なく過ごしてるだろうさ」
シスターは寝てる子供達の部屋の扉をチラッと見ながらそう答えた。そんなシスターの顔からは、子供達への愛情を確かに感じられて思わず笑みがこぼれる。
「で、さっきの質問に戻るけど、あんたは神様を信じてるのかい?」
「そうですね……昔はもしかしたら信じていたかもしれないけど……今は全く信じてないかもしれません……」
「ふ〜ん……だったら、あんたは何のために祈りを捧げてるんだい?」
神様を信じてないのに神様に祈りを捧げている私は、今私に話しかけているシスターより矛盾しているから、シスターにそう問われても仕方ない。
「祈りを捧げてるというよりも……懺悔をしてるって言った方が近いかもしれません」
「懺悔……ね……」
シスターはそれ以上は私に何も聞かず、「寝る」と言って自分の部屋に戻って行った。そして、私は夜明けまで今日もずっと懺悔をし続ける。
私の心の夜は決して明ける事はなくても……
「うっ……!?やっば……!?改めて見てもマジ泣くわ……きっしーじゃなくてもコレは泣くわ……マジで……」
本気で涙がポロポロと流れそうになった牧野は、読んでいた本を近くに置いて、寝る体勢に入る。
「はぁ〜……もし電子小説みたいに、乙女ゲームの「リリカルスクールラブ」の世界があったら、アリーさんには絶対幸せになってもらいたいわ……」
あの本を読んだからこそ、牧野は心の底からそう呟いた。
だが、牧野は知らない。本当にその世界があって、自分の親友がそのアリーの姉になり、今はアリーはその親友に夢中になっているという事実を……
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