外話:リリカルスクールラブ逆ハールートBEのお話 前編
私、牧野 陽子は仕事帰りに寄った本屋で一冊の本を見つけてつい衝動買いをしてしまった。私はマンションに帰るなり、その本をベッドの上に置いて溜息をつく。
「はぁ〜……つい、思わず衝動買いしちゃったよ……コレ……」
私が買った本、それは、私と今は亡き親友のきっしーがハマっていた乙女ゲーム「リリカルスクールラブ」の逆ハールートのBEストーリーを書籍化したものである。
前々から、このBEストーリーが衝撃的過ぎて書籍化を望む声があったけれど、何年か経過してとうとう書籍化さてしまったようである。
「きっしーを思い出してついつい買っちゃったけど……きっしーってアリーが大好きだったから、この本買ったかどうか分からないよね〜……」
私は苦笑を浮かべつつも、せっかく買ったのだから、パラパラとページをめくってみた……
「えっ!?お姉様が……!?死んだ……!!?」
私、アリー・ステインローズにその悲報が舞い込んだのは、お姉様が私を刺そうとした事件から1週間が過ぎた頃だった。
あの日の事は今でも思い出す……私を射殺すような目で睨むお姉様、その手に持ったナイフを私に向けてきた。しかし、すぐに駆けつけてきたカイン王子達によりナイフははたき落とされ、お姉様はカイン王子達に拘束され、そのままお姉様は牢へと連れて行かれた。その間も、お姉様はずっと私を憎しみを込めた瞳で睨みつけていた。
そして、今、お父様とお母様が私に、お姉様が牢屋で死んでいた私に告げてくれた。告げたお父様とお母様の目には涙が溢れていた。お父様やお母様はちゃんと私達娘を平等に可愛がってくださっていた。だから、娘の死が悲しくて仕方ないのに、私の前で気丈に振る舞う姿が逆に痛々しかった。
「アリー。コレを……」
「コレ……は……?」
「アンナが最後に書いた私達宛の手紙だ」
私はそれを聞いてすぐにその手紙を読み始めた……
お父様。お母様。それに……アリー。
皆がこの手紙を読んでくれてるという事は、私はもうとっくに亡くなったのね。何も言わず旅立っていく私をどうかお許しください。お父様。お母様。
今更言っても信じてもらえないかもしれませんが、牢に入り、完全に孤立状態になった時、浮かんでくるのは後悔の念ばかりでした。
私はもっと色々ぶつかるべきだったと。お父様に。お母様に。アリーに。それで、拒絶されるなら、きっぱり諦めて離れるべきだと。
結局、私は怖かったんです。きっぱりとみんなに拒絶され、皆から僅かばかりある私への愛情が完全に無くなるのが……怖くて……怖くて……それを、言い返せない妹のせいにする事によって、不安を解消して……本当に酷くて醜い姉だわ……
そんな私には裁きが必要です。だから、最初からアリーを刺した時、私も死ぬ為に用意していた毒薬で命を絶つ事にします。
こんな不出来過ぎる私を今まで育ててくださり、ありがとうございます。お父様。お母様。
それと……アリー……今更こんな言葉……信用出来ないかもしれないけれど……あなたは幸せになって。私の分まで。
アンナ・ステインローズ
「うわあぁぁぁぁぁ〜ーーーーーーーーーー!!!!?」
私は屋敷中に響き渡る慟哭をあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます