外話:アルフとクレアの結婚前のお話
これは、アンナやアリーの両親、アルフ・ステインローズとクレア・ステインローズがもうすぐ結婚という時のお話……
もう間も無く、1組のビックカップルが結婚という段階まできていた。1人は、このステインローズ領の領主となる、アルフ・ステインローズ子爵。もう1人は、その領の片隅にある孤児院出身だった女性クレア。
2人は色々な物を全て乗り越え、後数日で結婚を迎える予定である。
「クレア……とうとうこの日がやって来たな……」
「えぇ、あなた。結婚式前に言うのもあれだけど、愛してるわ。あなた」
「私もだよ。クレア」
もう間も無く結婚する2人はあっという間に2人だけの世界を作り、こうなると、もうやる事は一つしかありませんね。アルフとクレア、お互いの唇と唇が徐々に近づいていきます。
しかし、間の悪い奴というのは、どこの世界でも現れるものなんですね〜……
「アルフ!?大変な……ん……だ……」
間の悪いタイミングで入室してきたのは、この国の第四王子でありながら、上3人の兄が諸事情で王位継承権を放棄した為、次期国王の座に就くことになったアスラン王子である。
アスラン王子は大変な事態が起きたことに慌てていたせいで、入室の際にノックを忘れていた事を後悔したが、時すでに遅しである。
「おい。アスラン。仮にも一国の王がノックもせずに入室するとは非常識だと思わんか?なぁ?」
「アダダダダダダぁ!!?すみません!?すみません!?」
アルフはアスラン王子の顔を片手で掴んでギューと握りしめる。それを受けたアスラン王子はただひたすら涙目で平謝りするしかない。これが、王子と子爵のやり取りであると誰が信じるだろうか……
「きゃあぁぁ!?ちょっ!?アスラン様!?クレアお姉様!!アルフ様を止めてくださいませ!?」
その後、アスラン王子の悲鳴を駆けつけてやって来たのは、リアンヌ・アスカルド侯爵令嬢。アスラン王子の婚約者でもあり、近々ちゃんとした挙式も行われ、彼女も次期王妃となるのだが、そんな彼女は涙目でひたすらクレアに、アルフを止めるよう懇願する。
「あらあら。ダメじゃない。リアンヌ。仮にも、次期王妃様になる人が、人前でそんなはしたない声をあげちゃ」
「いや!?好きな人痛めつけられて叫ばない人いないと思うんですけど!?クレアお姉様実はめっちゃ怒ってますよね!!?」
クレアはずっとニコニコしているが、付き合いがあるリアンヌには、彼女がものすごく怒ってるのが分かった。
やがて、アルフは数分経ってようやくアスラン王子を解放した。
「それで、さっさと用件を言え。3分だけ聞いてやる」
「一応俺王子で、次期国王なんだが……まぁ、いいか……実は、とある蛮族がこの国を攻めようとしてきてな……」
「断る」
「って!?まだ何も言ってないのに即答かよ!!?」
あまりの即答ぶりに驚くアスラン王子。アルフは軽く溜息をついて
「大方、その進行中の蛮族を片付けろという話だろう。断る。俺は数日で結婚する身だ。その身を蛮族の血で汚して結婚式に臨むなど冗談ではない」
確かに、アルフの言う通り、アスラン王子はアルフにそれを頼もうとしていた。ここまで頑なになったら、テコでも動かないことは長い付き合いでアスラン王子は分かっていたが
「そのお前の結婚式にも関係する話なんだよ」
「……何だと?」
「実は、蛮族が進行してくる場所が、ちょうどお前達が式を挙げる教会付近でな。斥候の話によると、ちょうどお前達が結婚する日にやって来るんじゃないかと……あれ?アルフは?」
「彼なら剣を持って出かけましたよ」
「そうか……終わったな……」
と、アスラン王子は遠い目をして呟いた。
翌日、数10万といた蛮族の兵士達は1人の暴君によって全滅させられた。その後、何事もなかったかのように戻ってきたアルフは、しっかり湯浴みし、数日後に愛しのクレアとの結婚式を行なった。
これが、アルフ・ステインローズが皆に恐れられている伝説の一つである……
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