6.アリアンロッテ王女は見ています
アンナ達がそんな風に会話をしている現場をジッと眺めている人物がいた。そう。それこそアリアンロッテ第一王女である。
「間違いない……!あの女が私の可愛い可愛い弟をキズモノにした元凶の女……!アンナ・ステインローズ……!」
騎士の甲冑を纏ったままそう怒りの声を漏らすアリアンロッテ。その片手には、アンナ・ステインローズの写真が握り潰されていた。
本来ならこの姿でいたら誰かしらに気づかれそうなものだが、彼女は一応騎士として隠密活動的な事もしているので、認識阻害の魔法は得意としていた。
しかし、何故アリアンロッテがアリーの事は恨まず、アンナだけを恨むのかと言うと、そもそも、あの事件の後ヴァン王子とアンナ、カイン王子とアリーの婚約破棄が正式に発表された時、民衆・貴族の間ではアンナがヴァン王子から振られたので、アリーにも婚約破棄をするように無理矢理迫ったのではないか?という噂が広まったのだ。
この噂はもの凄い勢いで広まっていき、アンナの悪評がとどまるところを知らなくなったので、ヴァン王子達が噂の火消しを早急にするようアンナに言ったのだが、当のアンナが……
「そんな事したらアリーがキズモノ令嬢として扱われてしまうではないですか!私の悪評なんかで妹がキズモノとして扱われないなら願ったり叶ったりなので問題ないです!!」
と、言ったので噂の火消しを積極的にする事が出来なかったのだ。が、その噂がアリアンロッテの若手騎士達にまで広まってしまったのは、アスラン陛下としてもそれは大きな誤算だったであろう。しかも、その噂がアリアンロッテの耳に入る事も……
「しかし、あの髪の短い女性は一体誰なんだ?」
ここで、アリアンロッテはアリーにようやく目を向けた。一応、アリアンロッテはアリーの写真も入手していたが、髪がまだ長かった頃の写真だったので、髪が短くなってるアリーの姿は知らなかったのだ。
「ハッ!?まさか!?あの女はあの悪女の女で、あの悪女が、あの女と一緒になりたくて私の可愛いヴァンとの縁談を切り!体裁が悪くなるといけなくなるから、妹にカインと縁談を切るように強要したんだな!」
どこをどう考えたらそうなるのか……しかし、それを指摘してくれる人はこの場にはおらず、アンナはアリアンロッテの中で極悪な悪女認定された。
「ならば!あの女も断罪対象だな!」
こうして、まさかのアリーまでもがアリアンロッテの断罪対象にされてしまった。これが、アンナ最大のピンチを招くことになるが、それはもう少し先の話である。
「ん〜!しかし!ここのスイーツはどれも絶品だな!まさか我が国にこんなスイーツが美味しい町があるとは知らなかったぞ!」
実はこう見えてもスイーツ好きなアリアンロッテ第一王女は、王城でも食べた事がないようなスイーツの数々に舌鼓をうつ。
しかし、彼女は知らない……このスイーツの数々が、彼女が悪女認定した者が生み出した事に……しかも、その悪女認定した人を断罪したら、この国のスイーツ文化は無くなる可能性がある事を……
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