4.無知とは残酷である

アリアンロッテ第一王女の言葉に数人の騎士は固まっていた。主に、アスラン陛下に命じられ、アリアンロッテの監視を命じられたベテランの騎士達である。しかし、それでも騎士の1人がなんとか口を開く。


「あの……ステインローズ領に殴りこみというのは……?」


ものすごく恐る恐る感じで騎士の1人がそう聞くと


「ん、何でもステインローズ伯爵令嬢の長女のせいで、私のそれはそれは可愛い可愛い弟達が傷物になったそうじゃないか。だから、ちょっと一発殴ろうかと思ってな!」


アリアンロッテ第一王女は凄い笑顔でそう言っているが、目が全然笑っていなかった。これは、かなりキレているやつだ。マズイ……そう思ったベテラン騎士達は即座に全アリアンロッテ騎士団を招集させた。


「誰だ!?アリアンロッテ様に王子達が婚約破棄した事実を伝えたのは!?」


騎士の1人がそう聞くと、若い騎士の1人が挙手をして……


「アリアンロッテ様に、可愛い弟達は今何をしているのかと問われましたのでありのままに答えましたが?」


「馬鹿野郎ぅ〜ーーーーーーーーーーーー!!!!」


「ぐぼはぁ!!?」


ベテラン騎士の1人がその挙手した若手騎士を思わず殴り飛ばす。


「あっ、任務なんて言ったが、これは私個人の任務だから、お前達はゆっくり国に戻って大丈夫だぞ!それじゃあ!」


「ちょっ!?お待ちください!!?アリアンロッテ様!!?アリアンロッテ様ぁ〜ーーーーーーーーーー!!?」


ベテラン騎士達がアリアンロッテ第一王女に制止の言葉を投げかけるが、時すでに遅し。彼女は飛んでウィンドガル王国の、恐らくステインローズ領まで向かって行った。マズイ……これは本当にマズイ事になったとベテラン騎士達は青ざめる。


「我々も後を追うぞ!!なんとしてでもアリアンロッテ第一王女を止めるんだ!!?」


「えっ……いや……ですが……我々にあの方を止めるなんて無理ですよ……」


「それに、ステインローズ伯爵令嬢の長女と言ったら、色々と悪い噂が絶えませんし、ここらでアリアンロッテ第一王女に成敗してもらった方がいいですって!」


「馬鹿者!!?成敗されたら困るから言ってるんだ!!?」


ベテラン騎士達は若手騎士達の無知さに頭を抱えたくなった。


ベテラン騎士達もステインローズ伯爵令嬢の長女の噂は色々聞いてはいる。が、同時に彼らはアルフ・ステインローズ伯爵の武勇伝も知っているのだ。そして、そのアルフが妻だけでなく双子の娘達も溺愛している。親愛深いあの男が、娘を傷つけられたと知ったら……


「確実に……!?国が滅びる……!!?」


アリアンロッテ第一王女の強さもよく知ってるベテラン騎士達だが、同時にアルフの強さも知っている。もし、この両者がぶつかれば、勝敗は分からないが、確実に国が戦火に包まれてしまうのだけは確実だ。これは、自分達の命をかけても止める必要がある。


「とにかく!全軍!アリアンロッテ第一王女を止める為!行くぞ!!」


ベテラン騎士達はそれはもう必死の形相で若手騎士達に命じる。若手の騎士はその必死さに疑問を持ちながらも黙って従った。

最悪、間に合わなくても、騎士らしく国民へ避難の指示や避難誘導をしようと心に誓うベテラン騎士達だった。

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