地球照

「地球照だ! 月二つ!」と籠の中の極楽鳥が鳴く。外に出てみると確かに月が二つ。黄色く光っている三日月と灰色の光の部分。どういう原理だね、と訊けば

「この惑星に当たって照り返した光が暗いはずの部分を明るくしてるんだ、と今から二百年後のケプラーなる学者さんが証明するさ」

 教会の神父さまは、およそ五千年前に神が創造した此世界の南側に生き物はいないと宣われる。だが私の部屋には対蹠地アンチポデスにすむ、一本足で跳ね廻るスキヤポデス人の剥製や、六千年前の恐竜の化石もあるし、籠の中では今より先の事だけ話す極楽鳥が数千年後に来るべき大災厄カタクリスムで人々が燃え、溺れ、潰れ、溶けて死んでいく様を唄い、小気味良い。

「月の世界に辿り着ける日は来るのかい」

「無論!」と鳴いたので嬉しくなった。緑色の壜に入ったエール酒を煽り、極楽鳥を窓から放った。二つ目の月までとんで、此星の奴らを揶揄からかってやれ。極楽鳥はそのまま銀色に消えていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

双月話集 ミヤマ @miyama_book

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る