第6話 せるりうむ

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特別収容プロトコル: ██年から適用開始され、広く一般に波及されている下記カバーストーリーの維持と補強に努めて下さい。またセルリアンに対しての不確定・曖昧なイメージ維持の為、民間団体等によりセルリアンの生態を明確化する学術研究が公表される動向を察知した場合は情報工作によりこれを妨害、阻止して下さい。当オブジェクトはいかなる場合でも「セルリウム」の呼称を徹底し、セルリアンとの関連性を想起させるようにして下さい。


・適用中のカバーストーリー: セルリウムはセルリアンの発生源となる有害無益な物質である


プロトコルの徹底によりセルリウムからの生成物をセルリアン状の実体に限定させてリスクを定量化し、セルリウムの真の性質の隠蔽する事により確保と収容を容易にします。生成されたセルリアン状の実体は不確定・曖昧なイメージの影響を受けて脆弱である場合が多く、一定の衝撃を与えた際に四散して消滅するセルリアンの特性が受け継がれる為、比較的容易に対処することが可能です。


大規模セルリウム貯蔵庫の付近のエリアはカバーストーリーを応用し「セルリウム汚染によりセルリアン発生の危険性大の為立ち入り禁止とした」として一般人、特に若年層の人間の接近を確実に阻止して下さい。セルリウムを扱うエリア内では実験時以外は人間の手によって直接描写された絵図の持ち込みは禁止され、あらゆる筆記具及び画材の使用は制限されます。



説明: セルリウム(プロトコルに従いアイテム番号非表記)は通常時独特の光沢と粘性をもつ黒色の液体です。

一定以上の適性を持つ人間(以降適合者と表記)がセルリウムに対して感情を込めたイメージを照射した場合、液体の状態から数百倍~数千万倍まで体積を膨張させ、適合者のイメージ通りの実体へと変化します。また適合者がイメージすればセルリウムを液体の状態に保ったまま自在に操作する事も可能です。適合者が感情を込めて描写した絵図にセルリウムが接触した場合、絵図を模倣した実体が生成される事が確認されています。

適合者はおおよそ10台前半頃の年齢の人間に多く確認され、適合者であっても高齢になるほど適性が低下する傾向が見られます。その生成能力は精神状態や生成物に対しての嗜好性に大きく左右されます。


現在までにセルリウムからの実体化が確認されているのは、架空・実在を問わないあらゆる生物、鉱物、食品、商業製品、大型機械的構造物、[削除済]、[削除済]等、非常に多岐に渡り、イメージ可能な実体であればどのような物でも生成物となり得ると推測されています。この特性により大量のセルリウムに強力なイメージ照射が行われた場合の大量の生成物の出現、あるいは適合者の絵図に触れ続けて連続生成状態に陥った場合にその生成物の性質によってはXK-クラス事象を引き起こす可能性が懸念される為、現在のオブジェクトクラスに分類されました。

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博士から不意に眼前に突き付けられた紙に戸惑うかばん。


「うわっと、急に興奮して呼び出したと思ったら、この紙がどうかしたの? 博士?」


「それを読むのです! かばん! ものすごい発見なのです!」


「ええっと、 け…てる? プロトコル? なんだか難しく書かれた文章だけど……どれどれ」


同じ部屋で助手は積み上げた書類を次々むさぼり読みながら嬉しそうに声を上げる。


「新しく見つけたこの隠し部屋、保管されている情報の質が段違いなのです!

 よほど偉くて賢いヒト達が書いたに違いないのです!」


かばんは難解な文章から意味の分かる個所を拾い読みして理解しようとする。


「うーん、感情を込めて描いた絵にセルリウムが触れた時は

 その絵に描かれた物が造られるって事? それは知らなかったなぁ……

 あとセルリウムはセルリアンの素だとみんなに思い込ませている?

 そういえば名前似ているね。 僕はセルリウムを今までフレンズ達を造り出す為だけに

 使っていたから、その為の物だと思い込んでいたよ」


「かばんが黒い液体の名前をセルリウムと知る前に扱えたのは幸運だったのです。

 もしも先に名前を知ってセルリアンと関連付けて認識してしまっていたら

 かばんはセルリウムからセルリアン状の物以外を生成するのは困難になっていたでしょう。

 この文書に書かれているプロトコルとはそういう事なのです、 っとそれよりも」


博士が改めてかばんの方を向き、目を輝かせて話し続ける。


「重要なのはセルリウムからはフレンズだけでなく

 どんなものでも生成出来るという事なのです!

 かばんが望むありとあらゆる物が自在に作り出せるのです! もちろん、アレも!」


「それは夢のある話だね。 本当に何でも造れるならサーバルちゃんの為に、

 あんな物やこんな物を……

 でも、残念だけどこの研究所に保管されてたセルリウムはもう使い切ってしまったよ」


「この文書によると大規模なセルリウム貯蔵庫がどこかに存在するらしいのです。

 それさえ確保できれば何でも造り放題になるのですが」


「大規模セルリウム貯蔵庫か、それが使えるならすごいけどそんなに都合よく見つかるのかな?

 場所が分かったとしてもこのエリアから遠く離れていたら行けるかどうか……」


その時、書類の山から助手が飛び出し地図を指差して叫んだ。


「博士! あったのです! 大規模セルリウム貯蔵庫の場所! このエリア内です!」

「でかしたのです! 助手!」

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