おつかわし屋事調べ 巻の弐 山姫と桜姫

山姫と桜姫 序の序 初次郎の遺言

 いいか、お市、藤次郎。

 お前たちにしっかりと覚えておいて欲しいことがある。

 それはな、腰に人斬り庖丁をさした侍って奴等の事だ。

 ただの御客なら、金回りのいい奴ぁいいお客だ。

 しっかりともてなして、しっかりと銭を払ってもらえりゃあ言う事が無い。

 だがな。

 御家の事とか血筋がどうとか、御政道がどうだとかの話には絶対に首を突っ込んじゃあ駄目だ。

 仕事以外の侍の御家の話も尋ねるなんて以ての外、聞くだけでも駄目だからな。

 何せ、あいつらは、面子とか家名とかの腹も膨れないしょうも無い事で、自分の生命や他人の生命を軽んずるような罰当たりの集まりだ。

 同じ人とは思えねェ。他人も自分も直ぐにバッサリだ。

 いいか。絶対に忘れんじゃあ無いぞ。

 侍とは深く関わるなよ。

 ろくでもねェ事になるからな。

 じいじいの頼みだ。忘れないでくれよ。

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