第18話 おおさまのみみはロバのみみ

 美容師をしている私はある日王様に呼ばれて、王様の髪の毛をカットする事になりました。王宮に入るなり、守秘義務に関する誓約書にサインさせられ、王宮で見聞きした事を絶対に他言してはならないと念を押されました。

 王様は、いつも大きめの帽子をかぶっており、髪の毛を見ること自体が初めてであった私は、いささか緊張しておりました。

 と、言うのも以前王様のカットを担当した私の先輩は知ってはいけないものを知ってしまったストレスから美容師を廃業してしまいました。この厳重過ぎるほどに警戒された王宮と、先輩のストレス、ここには一体どんな秘密があるのでしょうか。

 いざ、カットの場につきました。奥の重たそうなドアが開き、神々しさと共に大きな帽子をかぶった王様が現れました。なんとも言えないオーラと共にゆっくりと近づいて来て、こう言いました。

「ここで見た物は決して言ってはならんぞ」

 とうとう秘密を知る時が来たのかと、逃げ出したくなる気持ちを抑え

「はい、承知しております」

と、いい一礼しました。

 王様が帽子を取ると、そこにはロバの耳がありました。何と、王様にはロバの耳が生えていたのでした。

 王様は

「わしの耳がどうかしたのか?」

そう言ってきました。

 私は驚きのあまり声を出せずにいると王様はさらに続けます。

「わしの耳がどうかしたのか?」

私は声を震わせながらこう言いました。

「どうもしません。カットさせて頂きます」

そう言って、カットして行きました。しかし、どうしても言えない事があり、徐々にストレスの様なモヤモヤが溜まっていくのを感じました。

 カットのリズムと共にだんだんと積もっていくのを感じました。

 そして王様は、また聞いてきました。

「わしの耳がどうかしたのか?」

側近も続けます。

「王様の耳がどうかしたのか?」

私は、言ってしまいました。

「そんなことより、ハゲとるやないかい!!」

勢いでハゲてる箇所を叩いてしまいました。

 それはそれはいい音がなりました。

 そして、私は…

めでたし、めでたし

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