第17話 さんねんねたろう

 我々の村には、ニートらしき青年がいます。標高の高い私たちの村は昔から助け合って生きてきました。しかし、最近都会からの移住者が増え、隣の家ですらどこの誰が住んでいるのか分からなくなってしまいました。

 もう、助け合うなんて言葉も死語になってしまっんでしょうか。。。

 ニートらしき青年は、週に1度ぐらい外出しています。山の上の方に行き、しばらくすると帰ってきます。この青年を見かけるのは、週一回この時だけです。

 青年の家を訪れる方は少しいますが、どうも働いているようには思えませんでした。

 移住してきて三年になりますが、村の人達は、毎日寝てると言うことで、寝太郎と呼ぶようになりました。

 そんなある日、日照りが続き、我が村は水不足になってしましました。代々語り伝えられていた話によると、130年毎に水不足がやってきては、その度に、村で一番働かない者を生贄として差し出してきたとの事です。

 我々はすぐに村人を集めて話し合いました。

「今年は、130年周期の年だ。竜神様に生贄を捧げないと、村人は皆死んでしまう。」

「仕方ない、一番働かない者を捧げるしかない。」

「我々は、毎日9時から畑仕事をし、暗くなるまで働いている。寝太郎が生贄になるべきではないでしょうか?」

 我々の気持ちは決まりました。少し残酷ですが、村を救う為には致し方ない事です。村人はみんなで寝太郎の家に押し入りました。

 そこで見たものは・・・・

 我々では理解できないが、山頂に取り付けた太陽光エネルギーで電気はもちろん、我々の村の様な自然の影響で災害が起こる村に対して、水を供給したりろ過することで水不足などの災害から救う研究をしていました。

 特に、近くに川の無い我が村にとって重要な、貯水の研究は、かなり進んでおり雨水を貯水するだけではなく、山の様に貯水する事や、汲み上げる技術を考えておりました。

 朝から晩まで研究に没頭し、我が村の様に、都会から離れたところにも、簡単にインフラを整備する事が出来る仕組みを考えていました。

 ここで、ある人が言いました。

「めっちゃ働いているやん。」

 この一言で、村人たちの目の色が変わりました。

 一番働いていないのは誰か?

 そこから村人たちは誰も話をしなくなりました。

 寝太郎の活躍で我が村は、水不足に困る事は無くなりました。むしろ貯水技術に優れたハイテクな村になり、のちに人々はこれを文明と呼ぶようになりました。

 しかし、この文明の人たちの中にはあの言葉が

「一番働かない人は捧げられる。」

人々は働きましたが、自分が働かない人じゃないかと思う人たちが他人を攻撃し始めました。つまり働けない様にする人々が現れたのです。

 そのうち争いが生まれ、文明は滅びる事になりました。

 やはり社会には、必要悪という存在が必要なのでは無いでしょうか?

 いつの時代もそれは変わらない…

 必要悪の居ない組織では、今もまた、敢えて悪者を作り出しています。

そうやって人間は生きていかなければならないのです。

めでたし、めでたし

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