第4話 いっすんぼうし
私は、探偵です。
この度、ある名家の長女と結婚間近の一寸法師と名乗る男性の身辺調査に関してご相談を受けたので、ご報告させて頂きたく存じ上げます。
ある名家には、男性が生まれず、長女の姫子様の旦那となる方が、後継ぎになられるとの事が先日決まりました。姫子様は、そのような環境で育ったのもあり、少々性格的にキツくありまして、外見も目立つ方では無かったので、少々結婚から縁遠い方かと思っておりましたが、先日一寸法師との結婚を決めたとの事でした。
事の発端は、淀川に浮いていた一寸法師を姫子様がお助けになり、一緒に暮らすことになり、その後、夜道で鬼に襲われた姫子様を一寸法師がお助けしたとの事です。その鬼が持っていた打ち出の小づちで一寸法師は大きくなり、助けられた事に感動した姫子様は一寸法師と結婚を決めたとの事です。
それに関して数々の疑問があり、今回調査を依頼されたものです。
疑惑その1、鬼ってなに?
令和になった今日、鬼なんて存在するのか?
疑惑その2、なんで淀川に?
一寸法師は、今回たまたま姫子様に発見されたのですが、発見されなかったらどうするつもりだったのか?そもそもどこから来たのか?
疑惑その3、打ち出の小づちで大きくなって結婚?
たまたま鬼が打ち出の小づちを持っていたからいいものの、持っていなかったらどうするつもりだったのか?
疑惑その4、なぜ戦った?
なぜ、どう見ても劣勢な鬼に立ち向かい姫子様を助けたのか?普通ならば、逃げる選択肢も警察に通報する選択肢もあったはずでは?
疑惑その5、一寸法師の本名は?両親は?
おじいさんとおばあさんに捨てられたと言っているが、そもそも両親は?本名は?
疑惑その6、鬼と戦った際におなかの中から攻撃したとの事ですが、酸欠等にならず活動出来た理由は?
丸呑みした理由も不明。もし噛み砕かれたら一貫の終わりの中、その戦法はリスクの方が大きい。ましてや胃の中で活動出来るとは考えにくい。
本件に関して調査しました。
出生に関して
淀川上流の流したとされる地区に、該当するおじいさん、おばあさんは存在しましたが、出生の記録は無く、どのように一寸法師が生まれたかと聞くと、祈ったら授けられたと申しており、信憑性に欠ける。両親もおらず、このおじいさんおばあさんから生まれたとは到底思えない。よって、出生に関して何かしら隠していると考えるのが妥当。
姫子様との出逢いに関して
該当の淀川上流の流したとされる地区から発見場所までは30㎞ほどあり、お椀の様な安定感の欠ける乗り物でその道中を進むことは極めて困難。当時着ていた着物に関しても大きく濡れておらず、上流から川の流れに沿って来たと考える事は出来ない。よって、姫子様に発見される直前に川に入ったと考えるのが妥当。
鬼に関して
帰宅途中に全身が赤色の鬼が現れて、ボディガートを追い払い姫子様を食べようとした件に関して調査するも、襲われたとされる地区に、同様の目撃情報が無い。襲われた姫子様が証言する鬼が存在するのであれば、鬼の主食は人間かもしくは小動物の類と考えられるが、その地区や近隣地区にそのような事件ない。よって、鬼の存在に関して疑問が残る。なぜかその日だけ鬼が現れたと考えるのが妥当。
鬼のおなかの中からの攻撃に関して
丸のみされた生物が、おなかの中で活動する事はほぼ不可能。ましてや声を上げていたとの証言があるが、空気の無いもしくは少ない状況下で長時間の活動は困難であるとの実験結果が出てる。よって、おなかの中で活動したのでは無いと考えるのが妥当。
打ち出の小づちに関して
鬼が持っていたとされているが、鬼がそれを持つメリットを感じない。人間を小さくして食していたとも推測されたが、近隣地区での行方不明事件が起こっておらず、またわざわざ狩りで得た獲物を小さくする行為は動物学的に言っておかしい。よって、大きくしていたと考えるのが妥当だが、それならばもっと捕食しやすい小さい動物を獲物にするはずであり、鬼が打ち出の小づちを持って人間を襲う理由が見当たらない。よって、鬼は一寸法師の為に打ち出の小づちを携帯していたと考えるのが妥当。
以上の調査や推測により考えられるストーリーとしては、何らかの方法で打ち出の小づちを手に入れた一寸法師と名乗る容疑者Aは、鬼役の容疑者Bと結託し、おじいさんとおばあさん役のお二方には、金銭等の力によりお椀を流したとの虚偽の証言をさせ、姫子様に近づくために己の体を小さくし一寸法師として姫子様に近づいた。容疑者Bは、姫子様を襲うフリをし現れ、容疑者Aを飲み込んだフリをして口の中に含んだ容疑者Aにやられたフリをした。そして、打ち出の小づちを渡し元の大きさに戻った容疑者Aは、助けられて感動していた姫子様と、まんまと結婚を決めてしまった。と考えるのが普通ですが、どうしてももう一点疑問があります。
淀川で一寸法師を見つけ、連れて帰ったという姫子様。かわいいから連れて帰ったと証言していましたが、果たしてそんな事があるのでしょうか?そのようなおかしな生物を見かけたら、かわいいから持って帰ろうと言う気持ちの前に、恐怖を感じるのではないでしょうか?ひょっとすると、姫子様はそのような生物を以前から知っていたのではないでしょうか?
姫子様、いや、容疑者Cは、莫大な財産を手に入れる為、虚偽の結婚話をでっちあげたのではないでしょうか?
ここから先は、契約外の為調査はしませんが・・・・
めでたし、めでたし
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます