襲撃

ヤマト達がアカシャ研究所にやって来ると、いつもの研究所の雰囲気とは何か違っていると皆が瞬時に感じた。香椎が急ぎ足で研究所へと入って行く。中に入ると御厨が一人、茫然自失の状態で椅子に座っていた。

「どうしたっていうんですか!御厨さん!」と御厨に香椎が声を掛けるが、御厨は少し反応が遅れて「あ、あぁ。見ての通りさ」とやっとの思いで言葉をひねり出した。


研究所の中は争った形跡が生々しく残っていて、床には微量の血痕も見られた。

「何なんだこれは!これがあのBDCとかいうやつの仕業なのか!?」由行は目の前の惨状に驚愕の声をあげた。「ここにいる皆が奴らに連れ去られてしまった… 西田の奴、こんなことまでして…… 本当に狂ってしまったのか!?」御厨は耐えられない悲しみと突き上げてくる怒りに顔を赤くしていた。ヤマトが香椎に視線を向けると、香椎も内なる怒りを露わにしているのが感じられた。

「なんて危険な事をする連中なんだ!早く連れ戻さないと!」と由行が言った時、ヤマトが口を開いた。

「御厨さんは今、連れ去られたって言ったけど、御厨さんが最初に連れ去ってきたんだよね?」と言うので、すかさず由行が「ヤマトそれは違う!連れ去るのと連れてくるのでは意味が…」と言うと「先生は黙ってて!」とヤマトが由行に対して初めて強く主張したので由行は驚いて「もう先生じゃないんだけどな」と漏らし口をつぐんだ。「僕は御厨さんが施設に来たとき、この研究所に来ることを僕が決めてきた、僕の意思で。でもここにいる人達はどうだった?」「それは… 急いでいたんだ!悠長にしている場合じゃなかったんだ」「じゃあ一緒だよね、西田さんと。ここの人達は2人の都合で奪い合いに巻き込まれて…。僕から見たら御厨さんも西田さんも変わらないよ!」とヤマトが強い口調で言った。ヤマトの予想外の発言に香椎は眉を寄せ、怪訝そうな表情を浮かべてヤマトを見た。ヤマトは香椎の視線を感じながらも気づかないふりをした。

「そういう意味ではヤマト君の言うとおりかもしれない。だが私は皆を守る為に連れてきたんだ。私が連れて来なければ西田の犠牲者が増えていくだけなんだ」「だから言ったよね?始めに連れ去ったのは御厨さんでしょ?って。御厨さんが勝手なことしたから西田さんも同じことしたんじゃないの?」「………。」

御厨はヤマトの発言に言葉を失った。私の方法が間違っていたとでも?強引に連れてきたのが悪かったとでも?他にも方法があったのか?私のせいで西田を触発させたのか?私がもっと西田を説得していたらこんなことにはならなかったのか?


御厨が自分を懐疑し、冷静になっていくその様子を見た香椎は理解できないヤマトの発言に怒りをぶつけた。

「ヤマト君、君は何を言ってるんだ!御厨さんが連れ出したのは皆を守ろうとしてなんだ!俺はアイツを絶対許さない!!」と言うと一人で研究所を出ていった。

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