もう一つの組織

ヤマトが帰りたいというのに対して、御厨はしばし沈黙した後、

「ヤマト君の気持ちを尊重したいのは山々なんだけどね、能力者を狙う組織が存在することを知っておいて欲しい。あのセキュリティも君達を守るためのものなんだ。それを理解してもらった上でうちの所員が一緒に付いて行くということでどうかな?」と提案した。


「…僕達を狙う組織? 僕達を守る?どういうこと?」ヤマトには全く意味がわからない様子だった。能力がなければごく普通の子どもである。

「ここを出る前に外の雰囲気を感じてみることだね。1か月とはいえ研究所で生活していれば能力は自然と研ぎ澄まされるはずだから、我々を監視する意識くらいは簡単に感じられるだろう。」御厨は自信ありげに言った。


ヤマトが少し意識を澄ましてみると、御厨の言うとおり、確かに監視されているような意識が感じられた。人数も性別も分かるほどだ。「3人だよ!男が2人に女が1人。あの人達は何なの?すごい敵意を感じる。」とヤマトが言うと御厨は「やつらは以前、私達と同じ組織にいたのだけれど、考え方の違いから私達が能力者を連れてここへ逃げて来たんだ。能力者を実験動物のように扱い、時には命をも軽んじる…そんな方針に耐え切れなくなったという訳だ。向こうにも能力者がいるから、不用意に意識を読み取られることがないようにと君に言わないでいたんだ、すまない」と言ってヤマトに向かい頭を少し下げた。


「でもこれだけは約束して欲しい。今日中に必ず戻ってくることと、決して1人にならないこと」御厨がヤマトに伝えると所員を呼び、ヤマトの外出を許可した。


ヤマトが外へ出るため御厨に背を向けたとき、御厨がヤマトに意識を飛ばした。


(くれぐれも気をつけるんだ!同行の所員もヤマト君ほどではないが能力者だから意識での会話も可能なはずだ!わかったら右手を挙げてくれ)


するとヤマトと同行の所員が揃って右手を挙げて見せた。

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