研究所

御厨とともにやってきた研究所は東京の端にある高尾山にほど近い森の中にあった。ここはパワースポットとしても有名らしい。


研究所に入る為に幾つもの認証ドアを通過する必要があり、その度に御厨はカメラに向かって顔を向けていた。不思議そうな表情で見ていたヤマトに御厨が話しかけた。「この分野の研究は進んでいなくてね、研究の秘密を守る為のセキュリティって訳だ。情報を守り、外部から君達を守る為に必要なんだ。」


ヤマト達の生活する居住スペースのセキュリティチェックは実に2〜6回を数えるが、これはアカシックレコードへのアクセスレベルによってセキュリティの強度も分類されている。

研究所は実験室や医療器具みたいなものから、食堂、居住スペース、ジム設備まで整っており、一般の人なら快適かもしれない。


「あそこは何?あの人達は何をしているの?」ヤマトが尋ねた。

そこには5人の男女が床に座り目を閉じて瞑想しているようにも思えた。

すると御厨は「おや?ヤマト君でも読めないのかい?」と返す。

ヤマトは目を閉じて意識を集中してみたが、「読めないや」と小さな声で言った。


どうやらこの空間ではアカシックレコードへのアクセスは不可能か、よほどのアクセス能力を持ち合わせていない限り困難な状況らしい。それはいままで見た事のない不安そうなヤマトの顔が物語っていた。


御厨とヤマトの2人は研究所の入り口付近まで戻り、御厨がヤマトにアカシックレコードへのアクセスを要求した。アクセスが成功すると認証ドアをひとつ通過して、次のドアの前で再びアクセスを試みる。この繰り返しでヤマトは4回目まで成功した。

すると御厨は「初めてでここまで来るのは相当な能力だねヤマト君は」と言った。


ヤマトが開けられなかった5番目のドアを御厨が顔認証で開けると、第5スペースと呼ばれるこの部屋がヤマトの居住スペースに決まった。「僕はここで何をするの?」ヤマトは半泣きの顔で御厨に聞いた。

「怖がらなくていいよ、この場所では自由に好きな事をしていい。検査室ではアカシックレコードにアクセスしてもらい、脳波や血流などを調べる、能力の源を知るためにね」と御厨は答えた。


ヤマトは早くも施設長に会いたくなった。

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