訪問者
間もなくしてヤマトのいる児童養護施設に予言通り訪問者がやって来た。その訪問者は名刺を差し出し《アカシャ研究所》と名乗った。名刺を見るとアカシャ研究所 所長
「アカシャ研究所……、何しに来たのかは分かった。ヤマトをどうしたいんだ!?まさか里親として育てたいなんて言う訳でもあるまい。」
御厨は表情を崩さずに切り出した。
「話す前にすでにご存じとは、驚きです。申し遅れました、わたくしアカシャ研究所 所長の御厨と申します。わたくし共はヤマト君のような能力を科学的に解明し、能力開発を目的とした組織でございます。つきましてはヤマト君をお預かりさせて頂き、研究にご協力をお願いに参りました。」
不快な申し出と感じた施設長は思わず感情的になりそうな気持ちを抑え、冷静に対応しようと考え直した。「ヤマト本人の意思に任せる。私が決める事ではないでしょう!ヤマトも自分の事くらい自分で決められますから」
と言うと職員にヤマトを連れて来るように指示した。
職員がヤマトを連れて来ると、施設長が「こちらの御厨さんという方がヤマトの能力に興味があって研究対象として引き受けたいそうなんだが、ヤマトはどうしたい?自分で決めなさい」と言った。御厨は「研究対象だなんて本人を前にそういう言い方は…」施設長は御厨の言葉を遮り、「違いますか?ヤマトも言ってる内容くらい理解できますよ!それにどんなに言葉を選んだところでヤマトには無駄だと思いますよ?」というと、御厨はヤマトの方に体を向け、「ヤマト君。君の能力は科学的に立証されていないものなんだ。しかも未知の領域が沢山ある。その仕組みが解明されれば世の中にとって財産になるものなんだ。私達の研究を手伝ってもらえないだろうか」
その難しい申し出にヤマトはこう言った。
「行っても良いよ、ただ…」というと今度は施設長に向かって「そのかわり先生に助けが必要な時に帰ってこれるんだったら」と言った。
すると御厨は「もちろん自由な時間はヤマト君の好きなように過ごしてもらって構わないんだよ。君には報酬も用意しているから、欲しいものがあれば買い物だってできる」とヤマトに微笑んだ。
「ヤマト、君は行かないって言っていたじゃないか!」
「うん、だから先生と同じ気持ちなら行かないって 」
「………。」
俺がヤマトといたいと思うことがヤマトにとっていいことなのかと迷ったからか? 一緒にいるべきではないのではと。いや、ヤマトは俺が迷うこところまでも見えていたはず… なんだよな?
「… それで良いのか?」施設長がヤマトに確認をすると「大丈夫、僕を信じて」とヤマトはVサインをしてみせた。
こうしてヤマトの児童養護施設での生活は終わりを告げた。
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