エピローグ
松岡智治は本間幸哉の凶刃に倒れ、死んだ。
それでも人生の最期に自分の子供を救う事ができた事、死の間際に息子と繋がり、伝えたいことを伝えられた事が松岡にとっての贖罪だったのかもしれない。
その後施設長はアカシックレコードがどういったモノなのかを調べていた。初めて感情を表したヤマトを見て驚いたと共に、松岡の死が自分のせいであると感じているからだろうと、ヤマトを支えていかなければと考えていたからだ。
「しかしこんな世界が本当に存在するのか… ちょっと理解出来かねるが… ヤマトのために私には一体何が… 」と心の中で呟いた。すると、
「大丈夫だよ、諦めなければきっとわかる時が来るから」と聞こえた気がした。… 自問自答してしまったのだろう。
「そうだよな。諦めなければ… わかる」と自分自身に言い聞かせるように声に出して言ったのだった。
ヤマトの心にも変化が起こり始めていた。
父親の存在、愛情、愛好という感情を知り、それに心地良さを知ったと同時に愛する者を失う悲しみも生まれたのだ。今まで他人から嫌悪や憎悪を向けられても何も感じなかったが、自分が愛する者を失ったことで、それらの感情を抱くということも芽生え始めた。愛するが故に憎悪が生まれる。この相反する2つの感情は、全く別のもののように見えるが、一方だけのみを求めることは叶わない、という事だ。
ヤマトの意識にはそこまで具体的なものは見えていないが、ヤマトの変異を見れば、近い将来、必ず経験することになるのは想像に難くないだろう。
今、ヤマトは画用紙に絵を描いている。
画用紙の左上には黄色い小さな光のようなものがあり、右下には黒く塗りつぶされた数人の人影のようなものが描かれていた。
施設長がヤマトの後ろから絵を覗き込み、不思議そうに聞いた。
「これは何の絵だい?今までみたいに上手な絵とは違うんだね?」
するとヤマトは
「うん、僕にもわからないんだ」と施設長を見て恥ずかしそうに笑った。
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