初めて知る事実

松岡の手術は4時間半にも及んだ。

麻酔が切れるまであと約2時間かかるらしい。

時間も遅くなったため、施設長は日を改めようとヤマトに声を掛けた。

「今日はもう遅いからまた明日来よう。」

しかしヤマトは黙って首を振り動かない。


……仕方がない、今日はヤマトに付き合おう。


施設長はベンチの端に座り直すとヤマトを自分の傍に寄りかからせた。

「静かな病院ってなんか眠くなってくるね。」ヤマトはいつの間にかウトウトし始めていた。


〝 …… マト、…… ヤマト。 〟


自分を呼ぶ声が聞こえた。

ヤマトは目を開けて辺りを見回しても、その声の主は見当たらなかった。


〝 ヤマト。僕の声が聞こえるんだね? ずっと側にいてくれたんだね?。 〟


ヤマトが頷くと、その声はつづけた。


〝 僕はあの時、ヤマトの思考を読み取ったんだ。そこにいる施設長の願いを感じたんだろう? だから博幸君を助けに行った。僕にはヤマトが行く場所も何しに行くのかも読み取ることが出来た。そして…… 自分が幸哉に刺し殺されることも知っているのに、それでも博幸君を助けに行った。〟


〝 ヤマト、自分を大切にしろ。

お前にはまだやらなくてはならない事がいっぱいあるんだ! 僕がお前にしてやれることはこれしかない、最初で最後だ…。叶うならばもっと…〟


ヤマトは声の主の言葉を遮り言った。


〝 わかってるよ、あの一瞬で全部…。

僕を助けに来てくれてありがとう…

どうもありがとう、お父さん。〟



空が青みを帯び始めたその時、ICU(集中治療室)で松岡智治は意識を取り戻すことなく息を引き取った。

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