想定外
施設長は何やら考え込んでいる。
身の回りで起きた不思議な出来事に対し、理解が追いついていかない。
私が思っている以上に世の中分からない事だらけだ。
そもそもヤマトの能力はなんなのだ。
物を念力で動かす、というような超能力のようなものとは違う。松岡もヤマトと同じような能力を持っているってことは、孤児にはそんな能力が育ちやすいのか?
うん? そういうことなのか??
施設長は部屋を出るなり施設の子供達に声をかけた。
「誰かー、ヤマトがどこにいるか、わかる人ー?」子供達は誰もが「知らなーい」と口を揃えた。
うーん、、違うのか。
施設長は身の回りの整理を終え、松岡が運び込まれた病院へ向かうことにした。
松岡が無事だと良いが…。
予想外だったのはヤマトが松岡のそばを離れようとしなかったことだった。
松岡とヤマトは面識もなく、共通するのはあの妙な能力だけなのに、何故あそこまで…
施設長が病院に到着すると松岡はまだ手術中だった。手術室近くのベンチに腰掛けて手術室のドアの方へ目を向けると、ドアの横で地べたに膝を抱えて座っているヤマトがいた。
「ヤマト。こっちへ来てここに座りなさい」と施設長は静かに声をかけた。
ヤマトは顔を上げて施設長を見ると立ち上がり、ゆっくりと施設長のもとへ歩いてきた。
ベンチに座っても施設長の横で俯きじっとしていたヤマトに「お腹すいてないかい?」と声をかけた。
顔をあげ施設長を見たヤマトの目から涙がこぼれ落ちた。
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