激突


「そうだよ。有紗の兄、松岡智治だよ」と言った。


松岡は続けて

「僕は有紗を助けられなかった。能力を持ちながら先のことが見えなかった…。僕に見えたのは殺される正にその瞬間だった。…… 僕だって助けられるものなら助けたかったさ!だけど間に合わなかった…。」


「……それは……!君のせいではない!君はどうすることも出来なかっただけだ!」


施設長の胸に、なにかズンとくるものが感じられた。博幸の笑顔がよぎり、痛むような苦しさに襲われた。


「………有紗の未来が博幸のように見えたなら、僕は躊躇なくあいつを殺すだろう。あなたが博幸を救いたいならそうすればいい。」


「は!?殺す!?何を言ってるんだ!!他にも方法があるだろう!!」


「さっきあんたに都合良くいかないと言ったはずだろ?大体、その日がいつやってくるのかは僕にはわからないしね。」松岡は言い捨てた。


「都合良くいかない!?そんなことあるか!!大体、その日なら…」


「あなたは助けられないことへの罪悪感を恐れているだけだ。そんなものは他人の僕にとってはどうでもいい。」松岡は施設長の言葉を遮るように言った。


「どうでもいい!?子供が殺されるんだぞ!?」



「あぁそうさ。僕は自分の身の程を知っているからね。」松岡は答えた。

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