望まない選択

施設長はずっと考え込んでいた。

今日は博幸の両親と面談の日だ。どうしたら引き渡さずに済むのだろうか?

いつもなら規定に基づいて判断すれば済むのだが今回は違う。ヤマトが言うには引き渡せば博幸は…… どうにか出来ないものだろうか…。


博幸を救う方法……


考えても答えの出ない問題に時間ばかりが費やされていく。それでも考えずにいられない施設長だった。

それと同時にあることに疑問を感じ始めた。

そもそも規定に基づいて判断するだけで良いのだろうか。もっと見るべきところがあるのでは……この施設の目的は何なのだろう。


児相からの意見では自宅での外泊も済んでいて、問題もなかったことから引き渡しが相当であるとのことだ。博幸自身も両親との生活を望んでいる為プログラムを中止する理由はどこにもない。

施設長は博幸の両親が到着するまでの間、ずっと考え込んでいた。


ついにその時がきた。


ーーコン、コン。… カチャッ


施設長室に博幸の両親が入ってきた。

博幸の父親、本間幸哉ほんまゆきやは施設長に向かって頭を下げて言った。

「色々とお世話になりありがとうございました。私達も今日までの間、反省すべき点を改善して参りました。これから家族3人でやっていける嬉しさを忘れずに暮らしていきます」


施設長は挨拶を受けると両親の姿を見て


……ここまでは100点だ、と採点した。


本間幸哉は細身ではあるがしっかりとした身体つきで、スポーツをやっていたことを物語っている。メガネの奥から覗く鋭く細い目からは爬虫類のような冷たさが感じ取れる。


……こちらは0点だ、と父親の顔を見た。


職員がひと通りの説明を済ませ、博幸を連れてこようとした時、施設長が「私が博幸君をお連れする」と職員を制止して立ち上がった。


施設長は博幸に

「いま博幸のお父さんとお母さんが来てる。今日一緒に帰ることも出来るけど、どうする?」

と聞いた。


「えっ!ママが来てるの?。うん!一緒に帰る!」


博幸の嬉しそうなこの一言で、施設長の淡い期待は断たれてしまった。

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