変化


あの事件から6か月が経つ。


施設長の判断でヤマトは学校に行っていないが、彼は驚くほど何も変わらない。

それどころか、以前にも増して会話の時間は増えているほどだ。でもその多くは施設長に対してのものではあるのだが。


ヤマトの能力のおかげで施設の仕事が捗る。施設へ入所する子供との面談の際、ヤマトを同席させるだけで、子供の過去にどんな事があったのかが偽りなくわかるし、児相からの保護案件も、保護者の発言に嫌疑をかけるまでもなく確定することができる。


これは助かる!と施設長は思った。

このまま働いて貰いたいくらいだ、と。


職員も少しずつ心境に変化が見られるようだ。ヤマトに対峙することで自分の醜い部分を見せつけられる。それはヤマトから目を背けても消えない紛れもない事実だ。

それを反省して受け入れる職員が現れ始めた。


ヤマトの前では心の中に秘めることなど無意味であることを悟り、人間としての成長を促す結果となり始めていた。

施設長は自分を含めたヤマトの周囲の人間に変化が見られることに驚いたが、それとは対照的にヤマト自身は何も変わらないことにも驚きを新たにしていた。


そんなある日ヤマトが施設長に言った。

「今日、誰か来るの?」

施設長は目の前の予定表を見て

「ああ、博幸の両親が面談に来るんだ。」

と言うと、

「連れて帰ったらダメだよ。博幸くんが死んじゃうから」ヤマトは落ち着いた口調で続けた。


施設長は

「……そうか、わかった。」と思案げな顔で呟いた。

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