第3話 3
その日の午後、幼稚園も終わり、僕と孝ちゃんは公園に集合した。
公園でスーパーカーの本を交換するためでもあった。
いつ降るか分からない梅雨時の曇天の中、僕はオレンジ色の傘を持ってひとり、公園に駆け付けた。
公園にはもう孝ちゃんがいて、閉じた傘の柄を片方の手のひらにのせて大道芸見たいなことをやっている。手のひらに群青色の傘が立っていてゆらゆらとしながらバランスを保って何秒辛抱できるか1人で頑張っていた。
「孝ちゃん、お待たせ、なにやってんの?」
普段は理性的なことしかやらない孝ちゃんが珍しく原始的な遊びをやっている。
「手のひらで傘をずっと立たせられないかと思ってね・・・」孝ちゃんはそう言ってバランスを崩して傘を落とした。
「それだったら俺も負けないよ」僕はムキになって「手のひら傘立て」に参戦した。
「ほら、よいしょ、おお、危ねえ、ああ、失敗・・・」そんなやり取りが続いた。
10秒続いたらいい方。どっちが勝者かは忘れた。
「孝ちゃんが手のひらなら俺は頭の上に挑戦だ」
次に僕は頭の上に傘の先を乗せた。これは到底うまくいかないものだった。
昭和の傘まわし芸人、あの海老一染之助・染太郎師匠だってできないはずだ。
「直クンが頭なら俺は肩かな」今度は孝ちゃんは傘の柄を肩にかけて僕の目の前で奮闘した。これは上手くいったもので、肩は意外に掛かり易いことが分かった。
「肩かけ、肩かけー、おめでとうございます!」孝ちゃんは調子に乗って歌いだす。
「ふーむ、じゃあ俺は鼻」今度は鼻に傘の柄をひっかける。これは難易度が高くことごとく失敗。
「直クン、耳だよ耳」今度は孝ちゃんは耳に傘の柄をひっかける。失敗。
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