第4話 4

「ようし、こうなりゃ俺は口だもんね」僕は傘の柄を口の下の歯に引っ掛けてみせた。


 (ガプリ)僕は傘の柄を下の歯にくわえた瞬間、傘の柄が口の中にくわえた状態になって抜けないことに気付いた。


 「●▼#□*※・・・ムゴムゴムゴ・・・」僕は危機に瀕していることに気付いた。


 傘の柄が口にハマって抜けないのである。


 「●▼#□*※・・・ムゴムゴムゴ・・・」(助けて、孝ちゃん、抜くの手伝って)

そう言ったつもりでも声が出ない。


 自分で引きぬこうとする。頑として動かない。抜けない。痛みも出てきた。


 親友、孝ちゃんは目をまん丸くして僕から後ずさりした。


 「直クン、焦ったらだめだよ、ゆっくり大きく口を開けて」孝ちゃんの助言。


 「●▼#□*※・・・ムゴムゴムゴ・・・」やはりウンともスンとも言わず傘はすっぽりと口の中に納まったままだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る