第2話 2



その日は雨上がりだった。園庭の生垣には黄イチゴの実が生っていて梅雨も終わりを告げようとしていた。僕ら園児は先生の目を盗んでは黄イチゴの実を洗わずに取って食べる。口に入れた瞬間、甘酸っぱい味が口の中に広がった。


園庭で遊ぶ時間、孝ちゃんはあちらこちらにできた園庭の水たまりをダム湖と称し、シャベルで水たまり同士をくっつけて流れ込む「水の要塞」とやらを作っていた。


僕は負けず嫌いなところがあって、孝ちゃんの真似をして彼よりも大きな物を作ろうと必死で水たまりと水たまりの間をシャベルで掘り進めていた。


やがてお庭遊びの時間が終わり再び雨が降りだそうとも僕は園舎に入らず先生の制止を振り切って傘もささずに水の要塞作りにのめり込んでいた。


結局、お昼御飯の時間も先生の警告を無視し園庭中の水たまりをすべて水路で繋いでみせた。もちろん先生はあきれ顔だったけれども。


孝ちゃんには負けたくない、そう、僕は人一倍、負けず嫌いなところがあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る