第35話 襲い掛かる恐怖
魔道師長は焦っていた。このような手が魔王に通じるはずがない、と。
ドリューが知っている人間でハンナに掛けられた魔法を解ける者は以前ハンナの側にいたバハルのみだ。
魔道師長のドリューも前魔道師長もこの魔法を解除することはできなかった。更にこれからも魔法を重ねるように指示されてしまえば、解除する難易度が上がる。
そうなってしまえば、解除できるのは魔族、いや魔王かバハルのみだ。
奴隷の女が目が覚めたらすぐにでも変化の術をかけ、魔族領に送ると言い出すだろう。
それまでにどうにかならないものか、と必死に考えるが、なかなかいい案がでず焦る。
「くそっ!」
自室の壁をどがっと殴る。手から血がにじむ。
環境が改善されたとはいえ、また同じような魔法をかけられ地下に幽閉されている。
とりあえずバハルに手紙を書き、自分の信頼できる者たちにバハルと言う男を探すように指示し、先ほど侍女が来て陛下が呼んでいると言っていたので王宮へと向かった。
*******
目を覚ますと、気を失った時に見た同じ天井が目に映る。
ああ、夢じゃなかったんだ。
周りを見渡すと、陛下はいなかった。ほっと溜息をつくが、まだ体のだるさがあり体を起こすのも辛い。
手を上げると、じゃらり、と鎖の音がする。
太い鎖だが、重いと感じない鎖。これでは逃げ出すことはできない。
また陛下がいつ来るかわからない恐怖を抱えまがら布団を頭までかぶる。
そしてがちゃり、と扉が開く音がした。
コツ、コツと近づいて来る音にさらに大きく震える。
ベッドの側で止まり、ぎしりとベッドに座る音がする。
「ハンナ様、起きていますか?」
聞いたことのある声、ばっと布団から顔を出す
「魔道師長……」
魔道師長はたった一日でとてもやつれた顔をしていた。
扉のところに兵が立っている。魔道師長は顔を耳元まで近づけ小声で話す。
「見つかるかわかりませんがバハルさんに手紙を出しました。あと一通他の者に出しました。できればその者が来る前にバハルさんに来てほしいのが私の願いです。これからも私はハンナ様にいくつかの魔法をかけていくことになりましょう。ですが、希望を捨てないで。必ず、必ず助けます。」
そう言い終えるとバッと顔を離し普通の声になる。
「ハンナ様の御心が少しでも健やかにいれるように、と私からのささやかな贈り物です。」
魔道師長の隣に置いてあった小さな包みを渡される。
ベッドから立ち上がり会釈してそのまま扉の向こうへ行ってしまった。
震える手で包みを開けると、そこにはユリの花がある。普通のユリの花ではない。直ぐに帰れると思い馬車の中に置いていった、バハルが贈ってくれたと思っているユリの花。
バハルからもらった服は引き裂かれ、今は違う服を着せられている。短剣も腰に刺さっていない。
バハルからもらったものが一つでもある、それだけで心はこんなにも穏やかでいられる。
きっと、耐えてみせる。きっと、助けに来てくれる、と信じながらユリの花をそっと抱きしめた。
その日の夜、ハンナのもとに国王陛下が来た。
「やあ、ハンナ。昨日は疲れているのにごめんね。」
ハンナはベッドの上に座っているが顔も合わせず違うところを見ている。
「怒っているの?許してよ。今日はゆっくりかわいがってあげるから。」
かわいがってあげる、と言う言葉にぞくりと体を震わせる。
昨日のようなことをされるのかと思うとカタカタと震える。
そんな様子のハンナを面白がっているのか、にやにやと笑いながらぎしっと音を立てながらベッドに上りハンナの足首にそっと触れる。
びくっと体を揺らすと、とても気持ち悪い顔で笑っている。
すすす、とふくらはぎから太ももを伝う手はとても気持ち悪い。まだ体温の戻らない体には陛下の手はとても熱く感じた。
空いている手で肩を掴まれて倒され、ハンナの上に馬乗りになる。
歯がかすかにカチカチとなる。そんなことお構いなしに、唇を重ね舌を入れられる。
くちゅ、ぐちゅと音を立てながら口の中で舌は暴れ、胸に手を添えられ好き勝手に揉まれる。
「ほら、ハンナ。声出してもいいんだよ。」
絶対声なんて出すもんか、と睨むと少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になる。
「さあ、今日からちゃんとほぐしていこうね。」
その言葉がまるで死刑判決のようにずしりと重さがあり、心を締め付ける。昨日は気を失ったおかげで終わった。だが、今日はそう都合よく気を失うことなどないだろう。
涙をぽろりと流したハンナを気に留めることなく、ただ自分の好きなようにハンナの体をまさぐる。
気持ち悪い、早く終われ。
ふと、近くにある机に置かれた花瓶を見る。
ユリの花が一凛いけられている。花瓶に入れなくても大丈夫だが、自分の手元に置いていたらもし陛下が何か気づき捨てられてしまわぬように、花は花瓶に入れておくのが一番自然だろうと思い、ご飯を持ってきた侍女に
これは魔道師長が持ってきてくれた造花だからずっとここに置いといて、とお願いしたから多分侍女が捨てることはないだろう。
花瓶から目線を外し目をつぶり、自分がされていることに心も目も背けた。
反応のないハンナがつまらない。
昨日のように胸の先端を思いっきり掴んでも、ぐぅっ、と微かに漏らし顔をしかめるだけだ。
下の下着に手をかけるとかすかに体が震える。
するすると下げるとかすかに濡れているのをみて、口角があがる
「なんだハンナ。濡れているぞ」
何も反応はない。
膝を掴み足を上げる
「ほらハンナ、丸見えだぞ。お前の恥ずかしいところ全部。」
目からどんどん涙が溢れてくるだけで何の反応もない。
ちっと舌打ちをし、濡れたソコに口をつける。
「ひゃぁっ……!?」
目を見開き体がびくりと震える。
「ああハンナ、やっと鳴いてくれたね」
びちゃびちゃと音を立てながら舌で周辺をゆっくりとなぞる。
「うぅっ……やめ……やめて……」
「下の口はやめてなんていってないよ。ほら、こんなに濡れてるんだよ」
指ですっとなぞり、ハンナが見えるように濡れた指をハンナの目の前にもっていく。
「うぅ、ちが……ちがう……」
「何が違うっていうんだい?ほら、こんなに濡れているから、指が入りそうだよ。」
指の先端が少しずつハンナの何も知らない先へゆっくりと入っていく。
「い……いや……バ……バハル……やめて、助けて……バハル!!!」
うっうっと声を漏らし泣く。
顔はとても怒りに濡れていた。
「お前、この私がいるのに他の男の名前を呼んだな?」
その声色の怖さに体を震わせた。
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