第34話 地下の部屋

「ハンナちゃん、アルバン帝国の門が見えてきたよ!!」

リリアは馬車の窓を開け顔を出して嬉しそうに叫ぶ。

ハンナもチラリと外を見ると門が見える。

「危ないから顔を窓の外に出してはいけませんよ。あと少しで着くんですから、二人とももう少し落ち着きなさい。」

魔道師長は顔を外に出しているリリアの腕を引っ張り座らせる。

ハンナも戻ってこれたことがうれしくて馬車から降りて今すぐ家に帰りたかった。

誰もいないと分かってはいるけど、住み慣れた家に一刻も早く帰りたい。

門につき、門兵が魔道師長とハンナがいると分かると馬車を止めドアを叩く。

「どうかしたか?」

「無事のご帰還心よりお喜びいたします。魔道師長様とハンナ様が帰還されたらすぐに王宮に来るようにと言われております。」

「それは今すぐでなければいけないのか?」

魔道師長の顔が少し怒っているように見える。確かに長旅の後すぐに来いと言われても私も疲れてるからまた明日、とかにしてほしい。

「戻られたらすぐ、としか言われてないので、向かっていただけるようお願いします。」

魔道師長は渋々分かったと返事をし、リリアはここで別れることになった。

「ハンナちゃん、落ち着いたらまた一緒に冒険しようね!」

笑いながら手を振るリリアにまたギルドでね!、と返事をして王宮へ向かった。


王宮についてすぐに陛下の元へ案内される。

中に入ると書類の束が部屋のあちこちに積み上げられて少し、圧迫感がある。


「魔道師長、ハンナ、長期間の移動と出陣お疲れ様。帰ってきてすぐで申し訳ないんだけど……ハンナはまた魔族領にいる魔王の元に行ってもらう。」

目の前の人が一体何を言っているのかわからなり、ふらりと体がぐらつく

「陛下!どういうことですか!?」

「今回我々人間は敗戦した。負けた国は賠償金や何か大事な物を差し出すのが慣例。魔王が要求してきたのは聖女ただ一つ。……しかし、私とてハンナを魔族なんぞに渡したくない。」

二人が何か言い争っているが、何も入ってこない。すぐに魔族領に向かえば、バハルには一生会えなくなる。そんなのいや……

ハンナの手をハーネスがそっと握る。

「安心してハンナ、君は魔族になんかやらない。君は私のものだ。」

私のもの、と言う言葉に違和感を感じ顔を上げて陛下の顔を見る。彼はにっこりと笑っている。

そっとハンナの手首に腕輪をパチンとつける。

手首につけられたものが何なのかわからずこれは一体なんですか?と聞こうとすると

「魔道師長、ハンナに魔法を掛けろ」

「国王陛下のご命令でもそれは聞けません!」

「では、他の者に頼もう。」

「それはもっといけません!他の者がかけて失敗してしまった場合ハンナの魔力が暴走してしまうかもしれません!」

一体この二人は何を言っているのだろう、と二人の顔を見る

「魔道師長、立場が分かってるのかい?私の一言で魔道師長の座なんて奪えるのだ、君の一族は一体どう思うだろうね?これは君にしかできないんだよ。君は前魔道師長から教えてもらってるはずだよ。義母であり、妹にかけた魔法をハンナにかけるだけだ……簡単だろう」

陛下の笑う顔があまりにも怖くて体が震える。無意識に陛下に向かって魔法を打とうとする、が何も起きらない。

「残念だったね、ハンナ。その腕輪は魔法を封じるもの。そして今から君の中に流れている魔力を他の誰かに流れるようにして、変化の魔法をかけて魔王に送る、完璧だろう?安心して私の側にいなさい、死ぬまで私が飼ってあげるから。」


魔道師長が側に近づいてくる。

「魔道師長、や……やめ……」

後ずさりをするがすぐに壁にぶつかる。

「すまない……ハンナ様……」

泣きそうな顔でハンナの目の前で魔法陣を描く

体から一気に体から熱が失われていく。がくがくと足が震え立って入れなくなりその場に倒れ込む寸前で魔道師長が受け止める

あまりの寒さに、瞼が重くなりそのまま意識を失った。



「魔道師長!ハンナはどうしたんだ!?」

いきなり倒れ、意識を失ったハンナを指さし大きな声を出す。

「体から魔力がなくなり、気を失っただけです」

「そ……そうなのか。ならば、ハンナを今から移動させる。変化の術もかけて地下牢に連れていくぞ。」

「地下牢にですか?」

「うむ。お前たちが返ってくるまでに改装したのだ。そんなことよりさっさと魔法をかけてしまえ。」

魔道師長は変化の魔法をかけ、ハンナとはわからないように全くの別人のように変化させた。

「では連れていくぞ。」

ハンナに布を巻き兵を呼び運ばせ、階段を降り地下に向かう。地下の一番奥に着くととても牢だと思えないほど立派なドアがあり、逃げられないようにするために外のドアにはいくつもの鍵がつけられている。

中に入ると、とても広くこれが本当に地下牢かと思えるほどだった。ベッド、タンス、机、椅子なんでもそろっている。ただ、ベッドには鎖付きの枷があるのが少々気になる。

ハンナをベッドに降ろすように指示し、陛下はためらうことなく手足に枷をつけていく。鎖は長いが、これでは移動しにくいだろう。

そう思っていると兵が一人の奴隷の少女を連れてくる。

「この奴隷を魔王のところに連れていく。魔道師長、さあハンナの魔力をこの奴隷に流して魔王に引き渡してしまおう」

奴隷の少女は体をガタガタと震わせている。魔道師長は申し訳なさそうにしながら少女にも魔法をかけると体が痙攣して倒れる。

「うわっ!こいつも倒れたがこれも魔力のせいか?」

「はい。聖女の魔力は多く、奴隷などの元々魔力を持たない者にとってとても負担がかかるのです。数日は目が覚めないと思います。今変化の術もかけてしまうと、この奴隷は死んでしまいますので、目を覚ました後となります」

陛下は奴隷をこの地下にある牢に入れるように指示し、陛下はハンナを元の姿に戻させ二人牢に残った。




*******

「うっ……」

体がだるい、体の体温がずっと奪われている感じがする。

「やあ、ハンナ。目覚めたかい?」

目を開くと目の前に国王陛下の顔があるる。

「陛下……?」

「ああ、私のことはレオと呼んでくれ。」

ハンナの頬に手を添えて顔を近づけてキスをする。

「!?」

ハンナは起き上がり急いで離れる。離れた時にじゃらりと音が鳴り、音が鳴ったほうを見ると手足に鎖のついた枷がはまっている

「へ……陛下、どうかこの枷を外してください」

震える声で目の前の獣のような目をした男に懇願する。

「ねえ、レオって呼んでよ。」

少しずつ近づいて来る。状況もわからずカチカチと歯を鳴らして震える。

「ほら、言ってごらん。言わないとまたキスしちゃうよ」

キスされてしまいそうなくらい顔を近づけられる。

「レ……レオ様」

「うん、いいね。ご褒美だよ」

そういうと勢いよくキスをされ舌を入れられる。

「んんんー!!」

名前を言ったらしない、とは言っていない。暴れるが、体の熱が奪われているせいか全く力が入らない。

「ああ、きれいだハンナ。やっと私のものだ。たくさん可愛がってあげるからね。」

再びキスをする。気持ち悪い舌が口内を好き勝手に暴れる。

いやだ!気持ち悪い!こわい!バハル、助けて!!

涙をボロボロと流しながらやめてとお願いをするが、全くやめようとしてくれない。

「ああ、ハンナ。安心して君の初めてはちゃんと側室になってから奪ってあげるから。私はちゃんと結婚してからするほうだからね。それまでに痛くないようにちゃんとほぐしてあげるから。」

座っていたハンナを押し倒し丁度いい大きさに育った胸をぎゅっと掴む。気持ちよくもなくただ痛い。

バハルが出て行って1年半、リリアにどうしたら胸が大きくなるのか相談し、必死に育ててきた胸。立派に成長した胸はこんな男じゃなくてバハルに触れられたかった。きっとにらむと、更に笑顔になる。

「私が準備した服は最後まで来てくれなかったんだね」

そう言いながら服の襟首をつかむと思いっきり引き裂き胸が露になる

胸が出てしまっている事よりも、バハルからもらった服を破られてしまったショックが大きく固まってしまった。

何の反応のないハンナがおもしろくないと感じ胸に顔をうずめ、両手でハンナの胸を揉みしだく。

何も反応がないことにしびれを切らし、胸の先端をぎゅっと思いっきりつまむ

「ひぃあっ……んっくぅ……」

いきなり走った痛みに顔を歪める。

「ハンナ、だめじゃないか。私の手にちゃんと集中して……」

胸の先端を口に含み転がす。

やだ、やめてと頭を掴んで引き離そうとするがまったく力が入らず、好き放題遊ばれている。

「やめ……んっふぅ……」

「かわいいよ、ハンナ。」

体の熱は奪われていくようにさっきよりも冷たくなっていく。あまりの寒さのせいか、長旅の疲れか、目の前の現実から逃げたいのか、ふっと意識を失った

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