第23話 罪を明らかに
「ハンナ様の髪が茶色いですけど、変化の魔法ですか?」
歩きながらバハルに話しかける。ああ、と答えると魔法をといてほしいと言う。
「今から町の中を通ります。できれば聖女の証の白銀の髪を町の人間に見せながら向かいたいのです。」
「それが何か意味があるのか?」
「はい、カーネリアンが偽物であることを民衆に知らしめるためです。カーネリアンは聖女として何もしていないのです。討伐には行ってはいますが、騎士や勇者に任せっきりです。民衆は最近疑っています。そこに白銀の少女が現れる。本物の聖女が現れたと、見せつけるのです。」
「お前ら、ボロボロだけどあやしまれねえか?」
「あ、ははは。実は収納バッグ(小)を持っているため変えはあるのです。ぎりぎりここにいる者の分はあると思うので。」
そういうと腰につけた小さなバッグからフード付きのマントを出していき渡す。
「バハルさんも着ていただけますか?そのほうが怪しまれず中に入れますので。」
一枚渡されてきてみるが少し丈が短い。
「ぷぷっ、バハルカッコ悪い。」
「……その口、しっかりと塞いでやろうか。」
少しどすの聞いた声でハンナを軽くにらみながら顔を近づけるととびくりと肩を揺らして、顔を真っ赤にしながら俯き小さく ごめんなさいと謝った。
ハンナの髪に触れ、ふわりと微かに風が吹いたかのように腰まで伸びた美しい白銀の髪がさらりと揺れる。
「地下ではわかりませんでしたが、カーネリアンの変化した白銀の髪とは比べ物にならないくらいとても美しい白銀の髪ですね。」
他の魔導師たちもほう、と息を漏らす。
「そりゃあ、手間暇かけたからな。」
白銀の髪をひと掴みしてバハルの唇にもっていく。
ハンナも初めて、自分の本当の髪を見て目を開いて驚いた。
「ここここ、これ私の髪!?」
「ん?正真正銘ハンナの髪だ。茶色の髪もよかったが、白銀のほうがお前に似合っているぞ。」
ぼんっと顔が赤くなり熱くなる。褒められてるのに、なんか告白されているような気持になり、ぽかぽかと頭を叩く。
「ごほん、さ、そろそろ向かいますよ。」
再び歩き王宮へ向かう。ハンナは顔を赤くして俯いているせか、はたまた、フードをかぶり顔がほとんど見えなくなったせか、バハルの顔が険しくなっていることにハンナは気が付かなった。
「魔道師長様、おかえりなさいませ。あれ……?」
ハンナの顔と髪を見て一瞬で顔が驚いた顔に変わる。
「魔道師長様、この者は……」
「本物の聖女様を見つけた。王宮内にいる者すべてに伝えよ。」
はっ!と敬礼後王宮の門の兵は他の数名の兵に何か話、数名が走って王宮の中へ入っていた。
「さ、行きましょう。」
バハルはハンナの耳元に顔を近づける
「ハンナ、お前や家族にあんな目に合わせた者の末路を自分の目でしっかり見届けろ」
そういうと顔を離す。ハンナはバハルの顔を見て深く、頷いた。
顔はフードで隠れて見えないが、明るい声で案内をする魔道師長のドリュー。
そして兵と共に王宮に入り、通されたのは謁見の間であった。
謁見の間には王様とカーネリアンしかいなっかった。二人は聖女が見つかったことに喜び、笑っていた。
「魔道師長、この度はご苦労であった。早速泉とカーネリアンに同じように泉に魔法をかけよ。」
ドリューは顎に手を当て一瞬考えたかのような顔をするが
「いやです。」
ドリューがそう答えると、国王とカーネリアンは椅子から立ち上がり何かを叫んでいる。
「何をばかなことを言っているのだ!!これ勅命だ!!」
「何を言っているのよ!!この無能!!」
他に何か言っているが、どちらも叫んでいるため聞き取れない。
そしてぞろぞろと謁見の間に入ってくる貴族や官僚たち。
「な!?お前たちは呼んではおらんだろうが!無断で謁見の間に入ってくるなど!覚悟はできておろうな!?」
唾を飛ばしながら声を荒げる国王に、皆冷たい目を向ける。
皆、事の発端をある程度聞かされている者たちである
「恐れながら国王陛下、カーネリアン王女様は白銀の髪、銀色の瞳をされておりますが、聖女として実績は何も残されておりません。」
「カーネリアンは聖女の前に儂の娘!王女なのだ!聖女としての務めは戦の時のみでよいだろう!!」
ドリューがフード取り後ろにいる男に声を掛ける。
「では国王陛下、カーネリアン王女様が聖女だという証明を。カーネリアン王女様、こちらにお触れいただけますか?」
一人の男が白みのある美しい丸い大きな石を大事そうに持っている。持っているのは神官のようだ。
カーネリアンは口元に手を当ててカタカタと震えている。
「カーネリアン王女様、いかがされました?」
カーネリアンの側まで来た神官は膝をつき石を持つ両手を上に掲げている。
カタカタと震える手が石に触れるが何も起こらない。今までなら体にハンナの聖なる魔力が満ちていたため光っていたが、今触れた時石が光ることはなった。
それを神官が確認し頭をこくりと頷く
カーネリアンの顔は青さを通り過ぎて真っ白になっていた。
「カーネリアン王女様には聖女の証である魔力がございません。聖女であれば白く光り輝くはずです。」
神官がカーネリアンに一礼し、ハンナのほうへ向かって歩く。
バハルはハンナを床に降ろし、お前の番だと小さく耳元で話す。
目の前にある石とバハルを交互に見た後、ゆっくりと石に手を伸ばす。
ハンナが石に触れると部屋を明るく照らすほど白く強く光った。
周りにいた者たちは、おおお!!と声を上げる。
もう大丈夫だ、とハンナの手を上から握り、石から手を離す
周りから国王とカーネリアンを非難する声が響き渡る。
「わっ……私は生まれてすぐ父上と前魔導師長に勝手に聖女にさせられただけですわ!!!私は好きで聖女してたわけじゃないわ!!!罰するなら父上だけにして!!」
ハンナはかっと体が熱くなる
「あなたは国王の側室だった人なんでしょう!!?貴女が望んだんじゃない!貴女のせいで母も!父も!優しい伯爵様も!!あんたのせいでみんなあんたのせいで死んだんじゃない!!」
叫びながらハンナの目から涙が零れ落ちる。
バハルの袖をぎゅっと掴む。くやしい。この人がいなければ家族と幸せに暮らせていたのに。
バハルは優しく後ろから包み込むように抱きしめる。
国王は知らなかったのかカーネリアンの顔を見て驚いた顔をしている。
「それは本当のことなのか!カーネリアン!?」
魔導師長はいつの間にかカーネリアンの側に立ち、目の前で魔法陣を描き薬の効果をとく
そこには国王と年があまり変わらないはずの40代の女性は老け込み70歳くらいの女性が現れる。
魔法薬の代償として年齢よりも老けてしまっているのだ
「お……おま……」
国王はカーネリアン、いや側室フローラを指をさし震えている。
どこからか鎧を着た兵士がぞろぞろと入ってくる。
そしてキラキラした男が一人入ってくる。
「私は第一皇子ハーネス!国王と側室を国家反逆罪および聖女はどの国でも保護対象である!聖女の生命を脅かした罪を償ってもらう!!」
国王と側室を兵が囲み、縄をかける。
「いっいや!!!」
「儂は国王であるぞ!無礼者!!」
二人を謁見の間から引きずりだす。
ハーネスはこちらをちらりと見て、兵を引き連れハンナの前に来る
金色の髪、青い瞳の線の細い美少年が目の前に現れる
「聖女様……ああ、なんと美しい。私はハーネスです。今後私が王位につき、聖女様をお守りさせていただきます。」
美少年は膝をつき胸に手を当て一礼し、ハンナの手を取り手の平にキスをする。
バハルはハーネスからハンナを引き離し自分の背に隠す。
「おや、君は?」
ハーネスは怪訝そうな顔をしながら立ち上がりバハルを睨めつける。
「ハンナはまだ聖女としてここに留まると返事していない。」
ハーネスははっ、と声を漏らし
「魔導士の君、何を言っているんだい?聖女様は国の保護対象なのだ。王宮にいてもらってもおかしくはない」
「俺は魔導士ではない。ハンナの保護者だ。ドリュー、約束はどうなった?」
ハーネスの後ろで控えているドリューをぎらりと睨めつけながら見るとドリューはかすかに体を震わせる
「ハーネス皇太子様、ハンナ様は聖女として自覚されたのはつい先ほどでございます。保護対象とは言え、本人が望まぬ限り聖女は強制的に国に仕えさせてはいけない、と他国と確約もございます。聖女ハンナ様の意思を尊重しなくてはいけません」
「むっ、そうか。では、ゆっくりと口説く……いや説得していくことにする。」
ドリューはちらりとバハルを見る。バハルは口に出さず頷く。ドリューはほっといきをもらす。
「ハンナがどうするか返事をするまで自宅にいる。」
「ええ、それでかまわぬ。」
にっこりと笑うハーネスを見てバハルはちっと舌打ちをする。ハーネスは驚いた顔をして、君おもしろいねぇ、とフードで隠れた顔を見ようと覗き込みバハルをじろじろ見る。
「では今日はこれで帰らせてもらう。」
ハンナを抱き上げ、部屋にいる者たちをかきわける。
後ろから引き留められているような声が聞こえるが、今立ち止まればめんどくさいことに巻き込まれそうなのでそのまま大股で王宮を出た。
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