第12話 報酬と食事

ぎぃっと鈍い音を立てながらギルドのドアを開け中に入る。

中にはたくさんの冒険者たちが掲示板を見ていたりたむろっていた。

その中にリリアの姿があった。他の冒険者と楽しそうに話していたが、バハルに気が付き手を振りながらこちらに近づいてくる。

さっきまで楽しそうに話をしていた冒険者たちが睨んでいるようだが、気にするとつっかかってきてめんどくさいのでスルーする。

「バハルさん、早いですね!結果を一緒に聞きに行きましょう!」

バハルの手を引いてリンのいる受付に並ぶ。なぜかとてもご機嫌だ

他にも窓口があるのになぜリンなのだろうかと思っていたが、

リンちゃんとお友達なの!と聞いてもいないのに笑顔で言ってくるが、なんか返事すると語り出してめんどくさそうなのでそうか、とだけ返した。

順番が来て、リンは別室でお話ししますのでこちらに、と二階にある一室に通される。

部屋に入ると応接室のようだ。アクセスが神妙な面持ちで一枚の紙を見ながら座っていた。バハル達に気が付き笑顔になる。

「やあ早かったね、さあ、座って座って。」

向かいにあるソファに座るように促される。

リンは受付業務があるので部屋から出て行った。

「いやあ、すばらしいね。魔石はすべて本物。それよりも驚いたのはこの獲物の傷のなさ。

首を一太刀で切り落としているね。こんなにきれいに切り落とされているのを見るのは久しぶりだよ。勇者が時々退治した魔獣を持ってくるけど、ここまできれいではなかった……バハル君がすべて倒したのだろう?」

「……何が言いたい。」

アクセスの笑っている顔がすっと真顔に変わり、リリアはぞくりと体を震わせる。

「いや、君は一体何者だろう、と思って。勇者はまだ本来の力を発揮していないとはいえ勇者だ。勇者より優れたものがここにいるから気になってね。」

にこりと笑ってはいるが、目が笑っていない。

バハルは深いため息をつき、自分が魔族だと説明するわけにもいかないし、どうしたものか。

「あ、気に障ったのなら謝るよ。君みたいに強い冒険者がこの町に留まってくれるのは本当にうれしいことなんだ。」

「なら詮索はしないでほしいんだが。」

腕を組みながら足を組む。

「わかったよ。ごめんね、変なこと言っちゃって。さて、本題に戻ろうか。」

昨日渡した魔石の袋を机の下から取り出し、机に置く。

「ミノタウロスの討伐依頼の報酬は20から30と報告されていたため、今回の討伐数と当初の報酬額では見合わない。今日の早朝に急いで会議をした結果、ミノタウロス討伐報酬は金貨300枚、そして魔石の数が195個で金貨40枚、ミノタウロスの魔石と固体の数が合わなかったんだけど回収漏れかな?肉や皮も買取でいいね?手数料を引いて金貨100枚。肉も皮も状態が良くて買取価格が高くなったんだよ。合計金貨440枚だよ。大金貨がよかったら言ってね。」

ニッコリと満面の笑みでこちらを見ながらトレーに乗った金貨を差し出す。

リリアはあまりの金額の大きさにぽかんと口を開けていた。

「半分ずつでよかったかな?」

アクセスは金貨を数えて半々に分けようとする。

「いやいやいやいや!!!私何もしてませんし!こんなにもらう権利なんてないです!!」

アクセスは数える手を止めちらりとバハルを見てどうするの?と目で話しかける。

「半々だ。俺たちはパーティーを組んだんだ。どちらかがたくさん倒しただの何もしていないだの関係ない。半分に分けてくれ。」

「はーい。」

ニコニコ笑いながら金貨を分けていく。

「ごめんなさい、私何もできなかったのに。本当にいいの?」

「あ?しただろ?ほら目隠しされて俺の腕の中で体を震わせていただろう?」

リリアの耳元で囁くように話すと、リリアの顔がぼっと赤くなり、ばかばか!と言いながらバハルの胸を叩く。

そんな二人をちらりと見てふふふ、と小さな声で笑っていた。




「ど……どうしよう。私こんな大金持ったことない。怖いんですけど……。」

金貨を入れた袋を両手はちフルフルと震えている。

「あー、まあ、慣れだろ?」

「慣れ!?バハルさんこんな常日頃大金持ち歩いてるんですか?持ったことあるんですか!?」

くわっとバハルに詰め寄る。

「まあ、おじさんになればいろいろとあるもんさ……」

「まぁまぁ。バハルさん、居住地をお探しでしたよね?」

「ああ」

「ぜひ、我がギルドでバハルさんのお宅を探させていただきます。今回の依頼成功でランクをDに上げさせていただきました。ご希望は日当たりのよい2部屋以上ある借家か売り家で間違いないでしょうか?」

バハルは頷くと、ぜひともお勧めしたい場所があるのです!と力を込めて言ってくる。

「今日お時間ありますか?」

「昼からならな。」

「では昼の鐘が二回なるころにこちらにきてくださいね。」

バハルとリリアは部屋を出て階段を下りる。

ギルドにいる冒険者たちがちらりとことらをみているが、気にしない。ハンナに食事をあげなければいけない、早く帰らなければ。


ギルドを出てしばらく歩く。なぜかリリアもついてきている。きょろきょろと周りを見ている。

ああ、ギルドからついてきているのが5人いるな。

ちらりとリリアを見ると目が合う。へにゃっと笑ってはいるが緊張しているのか、いつものように明るい笑顔ではない。

バハルははぁ~とため息をつき、振り返る。

後をつけていた冒険者たちはまさかこちらに振り返るとは思わずびっくりした顔でこちらを見ている。

「何か用か?」

「っ!!おっさん、お前なんだよ!受付嬢のリンちゃんや俺らのアイドルのリリアちゃんになれなれしくしやがって!!しかもギルマスに直々に呼ばれるなんて!!」

なんだこいつら、金目当てでつけてきたんじゃないのか?

なんだよ、アイドルって。

「悔しいから、とりあえず持ってる金全部出せ!!」

あ、やっぱりそうでしたか。

「この金は子供のために稼いだものだ。そう簡単に奪われるわけにはいかんな。」

ふむ、とわざとらしく顎に手を当てて、話す

「いいからだせ!!」

5人の男たちは腰に差している剣を抜きこちらに向かってくる。

なんと、バカな人間たちなのだ。こんな街中で抜刀し攻撃してくるとは。

一人が剣を振り下ろすが、バハルはリリアの腰に手を回し片手でもち上げて飛び上がる。


「んな!?」

上を向いたと同時に足で男の顔を踏む。

ああ、めんどくさい。早く宿に帰ってはずかしがるハンナにスープをゆっくり飲ませたい。

ハンナの意識がはっきりしたので、恥ずかしがり震える手で抵抗するハンナがかわいい。バハルの楽しみが増えて帰るのが楽しみで仕方がない。ああ、だめだ、興奮してきた。早く済ませてしまおう

「俺は早く帰りたいんだ。邪魔するなら容赦をしない。」

バハルの体からぶわりと魔力があふれ、威嚇する。だが、ここにいる人間たちはバハルから溢れている魔力は見えていない。

「ひぃっ……!!」

二人人は失禁し、一人は痙攣、一人は過呼吸のように息を荒げてひゅーひゅーとなっている。

バハルの近くにいた男は、白目をむき泡を吹いて倒れていた。

「ふん、脆弱な奴らめ。」

そう言い捨てるとふと、リリアを見る。他の人間にはできるだけ魔力を当てないようにしていたが、何人か震えているな。

リリアはカタカタと震えた目でこちらを見てきている。よくみると、足が濡れている。

失禁してしまっているようだ。

うむ、おびえている女も悪くないな、などと思いながら、大丈夫か?と問いかけると、震える声でうんと返事をした。


めんどくさいがさすがに失禁した女を一人置いていくわけにもいかずリリアが宿泊している宿まで送り、宿の前で清浄魔法をかける。なんで今!?さっきしてくれてもよかったんじゃない!?と叫んでいたが恥ずかしがるリリアがおもしろくて忘れていただけだ。すまんと手短に謝り急ぎ足で宿に戻る。

ドアを勢いよく開けると、必死にスープを飲む練習をするハンナがいた。

はっと顔を上げてさーっと青ざめていくハンナを見て、にやりと笑うと、ひっと小さな声を上げてスラングに助けを求めるように見るがスラングは首を横に振ると、どんどん顔が青ざめていく。

バハルはハンナの横に椅子に座り、いつものようにハンナにスープをゆっくりと飲ませた。

少し抵抗していたが、いとも簡単に抑え込んで皿が空になるまでしっかりとハンナの恥ずかしがる姿を堪能した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る