第7話 バハル、報酬をもらう
門へ向かうと、先ほどと同じ門兵が立っていた。
「あ、バハルさんおかえりなさい。たくさんとれたみたいですね~……ってあれ?リリアちゃん?どうしたの?」
心配そうな顔をしてリリアに駆け寄る。
「ちょっとへましちゃって……バハルさんに助けてもらったの。」
「あ~、よかったね。今日門の近くにいたのバハルさんくらいだから、運がよかった。本当によかったね。」
門兵は優しくリリアの肩を叩く。リリアは目に涙を浮かべて、はい、はい、と頷いていた。
「バハルさん、見捨てないでマントまで貸して送ってくれているんだろう。ありがとう。」
門兵も頭を下げる。なぜ門兵まで頭を下げるのか不思議で首をかしげる。
「ただの気まぐれだ。それにそんなにお礼を言われるようなことはしていない。」
そういうと、門兵は満面の笑みでなかなかできないことですよ、と言った。
「さっさといくぞ……。」
少し照れくさくなっ……いや、やりとりがめんどくさいので急ぎ足で門の中へ入っていく。
「あ!待って!」
歩幅が狭いので必死にバハルについていく。
ギルドの中に入り、薬草をどんっと机の上に置く。
「バハルさん、これ全部薬草ですか……」
驚いた顔でバハルを見る。
「……?そうだが?」
「す……すごいですね。しかもこんな短時間で。一日かかって採取しても10本3束くらいが普通ですのに……。」
「あ、束にしてねえや……」
「いえいえこちらでさせていただきます!少々お時間いただきますがよろしいでしょうか?」
かまわん、と告げると大きな袋を重たそうに奥の部屋にもっていく。
受付の子が戻ってきてもバハルがまだ受付の窓口にいたので不思議そうな顔をする・
バハルの背中に隠れていたリリアがひょっこりと顔を出す。
「あら、リリアさん?どうしたんですか?あれ?そのマントバハルさんのですよね?」
バハルとリリアの顔を交互に見る。
「実はね、オークの討伐依頼受けてたんだけど失敗しちゃって、バハルさんに助けてもらったの。」
恥ずかしそうに俯き、泣きそうな声をしていた。
「ええ!!お体は大丈夫ですか?」
受付カウンターから体を乗りだりリリアの顔を覗き込む。
「リン、大丈夫だよ。ただ、服がボロボロだったからバハルさんがマント貸してくれたの。」
リンと呼ばれた受付の子は胸に手を当てほっと息を吐く。
「本当に良かった。バハルさんがオークの駆除をされた、ということでよろしいでしょうか?」
「うん、私は何もしてないからバハルさんに報酬渡して。」
「半分もらう。半分はこいつにあげてくれ。」
バハルがそう言うと、リリアはバッと顔を上げて首を横に振る
「だめだよ!私は何もしていないんだから!」
「予備の服はあるんだろうが、生きるには金がかかる。生きていくために依頼を受けたんだろう?やるといってんだからもらっておけ。」
リリアの髪をぐしゃっと撫でる。うむ、思っていた通りふわふわでとてもやわらかい。
もっと触っていたかったがこれ以上触るといろいろと抑えられなくなりそうなので頭から手を離す。
リリアの顔をちらりと見ると、リリアの顔は真っ赤になっていた。
「では、オークの討伐報酬をバハルさんとリリアちゃんで半々でいいかしら?」
「構わん。」
「あ……これオークの魔石剥ぎ取りしたやつ。」
受付カウンターに置くと一瞬いやそうな顔をするリン。たしかに嫌なのは分かるが、そんな目で見ないで上げてくれ……。とオークに再び少しだけ同情する。
すっと顔を笑顔に戻し、剥ぎ取り確認しました。と引きつった笑顔で汚いものをもつように指先で袋をもってまた受付の裏にある部屋にもっていく。
「バハルさん、薬草の集計が終わったみたいです。Fランク依頼のアザミノが268本、10本で銀貨1枚、Eランク依頼のスイレンソウが182本、10本で銀貨2枚ですで。どちらも品薄で本当に助かりました。こちらが報酬となります。」
トレーに乗せられたお金を差し出す。
「金貨6枚と銀貨5枚です。ほんの少しですがお色を付けさせていただきました。あと、オークの討伐報酬は金貨4枚、魔石の買取で銀貨6枚でしたので半分の金貨2枚と銀貨3枚をバハルさん、残りをリリアちゃんということでよろしいでしょうか。」
ああ、と答えて銀貨を小袋にしまっていく。
ふむ、宿代が3人で銀貨18枚くらいだったからまずまずの金額か?
隣でリリアが、バハルさん、すごい!!とキラキラした顔で見てきていた。
ギルド内にいる冒険者たちの中で、バハルのことを睨むようにしながら見ているのがちらほらいるが、関わるとめんどくさいので気づかないふりを決め込む。
ギルドを出るとリリアも一緒についてでてきた。
「んあ?俺は宿に戻るぞ?」
「え?あ……でもマント。」
「あー、ギルドに預けるかそのままもらってもいいぞ。」
バハルは頭をぼりぼりと掻きながら、めんどくさそうに答える
また会うのがめんどくさかったのだ。
「あ……じゃあ、ギルドに預けておきますね。また近いうちにギルドに行きますよね?」
上目づかいでバハルを見てくる。
バハルは身長が高いのでどうしても上目遣いになってしまうのだが・・。
「そうだな。」
そういうとそのまま宿へ向かって歩いていく。
バハルの背中を見えなくなるまで、顔を赤らめて見つめていることにバハルは気が付いていたが、めんどくさいので気にせず宿に戻った
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